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医師・医療従事者・医療機関の方々に対する法律事務所からの情報発信です。弁護士法人 河原町総合法律事務所。


by 弁護士 赤井勝治

医療水準について(2)

 今回は、医療水準とはどのような内容のものかについてです。

 まずは、これまでに裁判所がどのような判断をしてきたのかという過去の変遷について、簡単に見ておきます。

 当初は、医療機関や医師には、「最善の医療」を提供する義務があるとされていましたが、何をもって「最善」とするのかという基準は示されませんでした。
 そのため、医療が高度化していく中で、文字通りに「最善の医療」を提供する義務を課すとすれば、医師にとって酷であり、ひいては医療の萎縮を招いて、医療技術の進歩の妨げになるなどの批判がありました。

 その後、未熟児網膜症に関する事件の昭和57年3月30日最高裁判決が、「基準となるべきものは、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準である」と判示して以降は、この基準が広く使われるようになりました。

 ところが、今度は逆に、この判示が一人歩きし、医療水準は全国一律に決せられるものであり、医療の現場で広く行われている医療慣行が医療水準であるという論理が横行するようになりました。

 その後、平成7年以降の一連の最高裁判決によって、前記のような論理は正され、医療水準にいては、現在では、以下のように理解されています。

 すなわち、臨床医学の実践における医療水準は、相対的なものであって、全国一律な絶対的な基準ではありません。
 実際に診療にあたった当該医師の専門分野、所属する医療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性、当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関での知見の普及度等の諸般の事情によって決定されるものです。

 したがって、医療水準は、平均的医師が現に行っている医療慣行とは必ずしも一致するものではなく、医師が医療慣行に従った治療行為を行ったからといって、直ちに、医療水準に従った注意義務を尽くしたということはできないことになります。

 抽象的で、申し訳ありませんが、結局は、「医療水準」は、上記の諸般の事情を考慮して、当該事案において、裁判所がかくあるべきであったと評価した医療行為の内容(水準)であるということになると思います。

  赤井・岡田法律事務所
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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
by motomame | 2016-09-08 09:00