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医師・医療従事者・医療機関の方々に対する法律事務所からの情報発信です。弁護士法人 河原町総合法律事務所。


by 弁護士 赤井勝治

リスクマネジメントについて(1)

 今回は、紛争に備えてのリスクマネジメントについて、述べてみたいと思います。

 紛争には巻き込まれないように注意するのが一番ですが、どうしても避けようのない場合もあります。
 特に、近時、モンスターペイシェントと呼ばれる医療従事者や医療機関に対して自己中心的で理不尽な要求を繰り返す患者さんやその親族等の増加が問題となっており、医師をはじめとする医療従事者は、いわれのないクレームを受けるなどの紛争に巻き込まれる危険にさらされています。

 しかも、医師は、医師法19条1項の応招義務(「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」)を負っているため、その危険から逃れることが困難です。
 このような紛争が訴訟にまで発展することは、今のところまだそれほど多くはありませんが、今後は増加していくことが予想されます。

 こういった紛争についての相談をこれまでにお聞きしていると、最終的に問題となるのが、いわゆる「言った、言わない」という点であることが少なくありません。
 逆に言えば、この「言った、言わない」という点さえ明確にしておくことができれば、仮に紛争に巻き込まれたとしても、紛争をいたずらに拡大させたりせずに、適切に処理することが可能となります。

 そこで、以下、当たり前の話が続くかもしれませんが、この「言った、言わない」という点を明確にしておくために考えられる方策について述べていきます。

 まず考えられるのは、書面化しておくということです。
 書面が唯一絶対のものであるとまでは言いませんが、訴訟においても、書面は関係者の供述と比べて一般的に信用性が高いものとして取り扱われています。

 書面化の例として、まず、挙げられるのは手術の同意書といった同意書の類です。
 これについては、ほとんど全ての医療機関において、患者さんから取るという運用をされているものと思います。
 ただ、この同意書を実際には事後的に取っておられる例が散見されます。
 事情によっては、事後的にならざるを得ない場合もあるのでしょうが、それはあくまで例外的な取扱とすべきです。
 そうしなければ、せっかく同意書面を取っていても、それが事前のものではなく、有効な同意はなかったとして、紛争の種となります。
 のみならず、普段から事後的に取ることが常態化しているようだと、全ての同意書面について、事後的に取ったものではないかという不要な疑いをもたれることにもなりかねません。

 次に、患者さんなどに説明をした際に、説明をした対象者から説明を受けた旨の確認書(通常は、説明内容の記載された書面と一体になっていることが多いものと思われます)に署名・押印してもらっておくことが挙げられます。
 医師が患者さんなどに対し、きちんとした説明をしたか否かという点が問題となる紛争は、かなりの数にのぼるものと思われます。
 したがって、面倒くさがらずに、何か説明をした場合には、できる限り説明を受けた旨の確認書を取っておくべきです。
 最も適切なのは、説明内容の記載された書面の下部に、「以上に記載された内容の説明を○○医師から確かに受けました」との文言を入れ、その下に説明をした対象者から、日付の記載と署名・押印をしてもらっておくことです。
 ただ、全てについて、このような対応をすることは現実問題として無理でしょうから、せめて重要事項についてだけでも、このような形式の確認書を取っておきたいものです。
 重要事項以外については、もう少し簡略なものでも構いませんが、それでもできる限り確認書を取っておかれることをお勧めいたします。

 さらに、重要な書類を交付した場合には、その受領書も作成して、署名・押印をしてもらっておくべきです。 
 渡したはずの書面をもらっていないと言われることは案外多く、この場合、いくら渡した書面の控えを取っていても、それだけでは渡したことの証明にはなりません。

  赤井・岡田法律事務所
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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
by motomame | 2014-11-06 09:00