医師・医療従事者・医療機関の方々に対する法律事務所からの情報発信です。赤井・岡田法律事務所HP: http://www.akai-okadalaw.com


by 弁護士 赤井勝治
 専門委員というのは、平成16年4月から設けられた制度で、裁判の争点もしくは証拠の整理又は訴訟手続の進行に関し必要な事項の協議をするに当たり、訴訟関係を明瞭にし、又は訴訟手続の円滑な進行を図るために、専門的な知見に基づく説明をする者であるとされています(民事訴訟法92条の2)。

 この専門委員と鑑定人との大きな違いは、鑑定人が専門的な知見に基づく「意見」を求められているのに対し、専門委員は、「説明」を求められているという点です。

 専門委員は、非常勤として、裁判所から任命され、専門委員の名簿に記載されます。
 ちなみに、平成29年1月1日現在、京都地方裁判所から医事関係の専門委員に任命されている医師は、27名おられます。

 そして、具体的な事件については、裁判所から指定(指名)されて、関与していただくことになります。

 その関与していただく場面は、様々です。

 たとえば、訴訟手続における争点整理の段階で、訴訟当事者から出された主張や証拠の中に多用されている医学的な専門用語や専門的知識についての説明を行っていただくことがあります。

 また、証言の中に医学的な専門用語が多用される証人尋問に立ち会って、裁判官の求めに応じて、専門用語を簡単な言葉に言い換えたり、分かりやすく説明していただくこともあります。

 訴訟手続においては、裁判官が何を判断すればその事件が解決に至るのかといった争点を整理し、その整理された争点に関して、当事者が攻防を繰り広げるというのが理想です。

 しかし、医療訴訟のような専門的な訴訟においては、必ずしも争点の整理が的確になされているわけではありません。それは、裁判官や場合によっては訴訟当事者が、専門用語や専門的知識を必ずしも十分に理解できていないことに起因していることが少なくありません。
 
 また、訴訟当事者が攻防していても、その内容が専門的で、裁判官が必ずしも十分にできない場合もあります。

 そこで、医師である専門委員に関与していただき、専門用語や専門的知識の説明をしていただくことで、訴訟手続の円滑な進行を図る手助けをお願いするのです。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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# by motomame | 2017-03-30 09:00
 医療訴訟における鑑定人については、過去に取り上げたことがありました。

 「鑑定」は、専門性の高い分野について、特別の学識経験を有する第三者から意見を求めるものです。

 医師が裁判所から鑑定人になって欲しいとの依頼を受けた場合に、①時間と労力をとられ、精神的負担が大きすぎる、②法廷で人格攻撃などの質問をされ、不快な思いをするおそれがある、③何をどのように鑑定すればいいのかが分かりにくいなどといった問題点があり、近時は、これらを多少なりとも改善する努力がなされているということを述べさせてもらいました。

 ただ、現在でも、上記のような問題点が解消されているとは言い難いことは厳然たる事実です。

 現に、鑑定人の経験のある医師からは、カルテを含む膨大な訴訟記録を検討して、しかも鑑定書という書面を作成しなければならず、これにかかる時間と労力が甚大であること。そのうえ、後日、証人として法廷で尋問を受けることは、時間、労力、精神面において、かなり大きな負担であるとの指摘を受けたことがありました。

 また、鑑定事項が的外れであったり、何を求められているのかが分かり難いという指摘を受けたこともありました。

 今回は、この鑑定人とは異なる専門委員について取り上げてみたいと思います。

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# by motomame | 2017-03-23 16:00
 前回までに、2つの裁判例をご紹介しました。

 医師と患者さんとの間の診療契約の法的な性質については、病気を診察治療することを内容とする「準委任契約」であるとされています。

 この「準委任契約」とは、当事者の一方が法律行為でない事務を委託し、相手方がこれを承諾することで成立する契約のことを言います。

 そして、診療契約は、契約当事者間(ここでは医師と患者さんとの間)の信頼関係に基づく契約であると考えられます。

 したがって、この当事者間の信頼関係が決定的に破壊されるような事情が発生した場合には、もはや当事者は契約関係に拘束されることがなくなると考えることは可能でしょう。

 そういった見地から上記の裁判例を見てみると、医師や病院と患者さんとの間の信頼関係が破壊されている場合には、診療拒否に正当な事由があると認められるようにも読めなくもありません。

 しかし、これらは、それぞれの事案においては妥当な判断ではあっても、一般化することまでできるかというと疑問です。

 というのも、いずれの裁判例も、詳細に事案を見ると、それぞれが特殊な事案と言えなくもないからです。

 よって、安易に一般化してしまうのは危険です。
 
 むしろ、ケースによっては、信頼関係の破壊によって診療拒否に正当な事由があると認められる場合があると考えるのが相当でしょう。

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# by motomame | 2017-03-16 09:00
 近時、インターネットの情報などの中には、医師と患者さんとの間の診療契約上の信頼関係が破壊されている場合には、診療を拒否しても、応招義務違反にはならないかのような記載が散見されます。

 このような記載は、以下の下級審の裁判例等を根拠にしているものと思われます。

 その二つ目は、東京地方裁判所平成26年5月12日判決です。

 この判決では、「診療に従事する医師は、正当な事由があれば診察治療の求めを拒むことができるとされているところ、原告と被告との間の信頼関係は適切な医療行為を期待できないほどに破壊されていることからすれば、原告には被告からの診察の求めを拒否する正当な事由があるというべきである。」旨判示しています。

 この事案は、少々複雑なのですが、簡略化すると、過去に手術を受けた患者さんが、その約3年半後に、病院に対して、当時の診療録やレントゲン等の画像や手術録画等の開示や手術の説明を求め、これに対する病院側の対応を巡って紛争となりました。そして、病院側から、患者さんに対し、損害賠償などの債務の不存在確認や業務妨害等の禁止を求めて訴訟が提起され、その中で、裁判所は、現時点で、病院側は患者さんに対して、診療義務、問診義務はないと判断しました。

 裁判所は、患者さんが、病院長の説明に不審を抱くとともに、その対応にも不満を持ち、謝罪を求めるなどしたという言動からすれば、病院が患者さんに対して医療行為を行う上で基礎となる信頼関係は、もはや適切な医療行為を期待できないほどに破壊されていると言わざるを得ないとし、現時点において、病院側には患者さんに対して、診療義務、問診義務はないと判断しました。

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# by motomame | 2017-03-09 09:00
 近時、インターネットの情報などの中には、医師と患者さんとの間の診療契約上の信頼関係が破壊されている場合には、診療を拒否しても、応招義務違反にはならないかのような記載が散見されます。

 このような記載は、以下の下級審の裁判例等を根拠にしているものと思われます。

 まず一つ目は、弘前簡易裁判所平成23年12月16日判決です。

 この判決では、「診療契約において、患者は身体や生命という重要な法益を医師に託し、医師とともに継続的に治療を行うのであるから、診療の実施にあたっては医師及び患者間に信頼関係が必要とされる。そして、上記信頼関係が失われたときは、患者の診療・治療に緊急性がなく、代替する医療機関等が存在する場合に限り、医師または医療機関がこれを拒絶しても、診療拒絶に正当事由があると解するのが相当である。」と判示しています。

 この事案は、患者さんが大学附属病院で不妊治療を受けていたところ、患者さんから病院に対し、かかる治療に関して訴訟が提起され、そのため病院側から患者さんに「転医及び診療延期のお願いについて」という書面が交付され、これが診療拒絶にあたるかが争われたというものです。
 
 裁判所は、上記書面の交付は、実質的に診療拒絶したものと解したうえで、患者さんからの訴訟提起により患者さんと大学附属病院との信頼関係は失われたと認定し、さらに、患者さんの診療・治療に緊急性がなく、大学附属病院の代替機関も存在したことから、診療拒絶には正当な理由が存在したと判断しました。

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# by motomame | 2017-03-02 09:00