医師・医療従事者・医療機関の方々に対する法律事務所からの情報発信です。赤井・岡田法律事務所HP: http://www.akai-okadalaw.com


by 弁護士 赤井勝治
 前回は、暴行や暴言を受けた場合には、自分一人で解決しようとせずに、警察や弁護士に早急に相談されることをお勧めしました。

 では、警察に相談する場合、どのようなことに留意することが必要でしょうか。
 まず、暴行などが発生したときに速やかに警察に相談されることです。そのときには、いつどのような状態で暴行が発生し、それによってどのような被害を被ったか、整理してお話ししていただく必要があります。特に被害について、たとえば怪我をされた場合には、受診をしていただき、診断書を確保していただくとともに、患部を写真撮影する等証拠化していただきたいと思います。結果として、それらの証拠が使われないこともあるかと思いますが、何らかの法的な対応をしていくためには必要なものであり、後から確保しづらいものですので、是非励行していただきものです。
 また、警察に相談されると同時に弁護士にも相談されることをお勧めいたします。弁護士は、警察への被害届や刑事告訴についてもアドバイスをすることができますし、また損害賠償請求等の民事的な手続きについてもアドバイスをすることができます。残念ながら警察が機敏に動いてくれない場合もあります。その場合には民事的な手段で対抗したり(訴訟や仮処分の申立て)、弁護士から内容証明郵便にて警告するなどにより、事態を沈静化させるができる場合もあります。また、警察への対応についても弁護士を代理人にすることにより、円滑に進むこともあります。

 そして、応召義務(医師法19条1項)との関係で、どう対応すればよいかアドバイスを受けることができると思います。
 医療機関における暴行や暴言も通常の社会生活におけるものと原則として同じであると述べて参りましたが、若干違うのが医師法19条1項の応召義務との関係です。医師法19条1項は「診療に従事する医師は、診療治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければこれを拒んではならない」とされています。この義務に反して診療をされなかったことにより、症状悪化など、患者に損害が発生した場合には、医師は損害賠償義務を負わなければならないことになります。

 では、暴力や暴言をする患者に対しては応召義務があるのでしょうか。
 この点、千葉地方裁判所昭和61年7月25日などは拒否する正当事由について、診療を求める患者の病状、診療を求められた医師または病院の人的・物的能力、代替医療施設の存否等の具体的事情を勘案して社会通念上やむを得ないか否かで判断されるとしており、一義的に明確にはなりません。なお、よく問題となる治療費未払いが正当事由になるか否かですが、厚労省などは正当事由にならないと回答しているところです。
 したがって、病状の程度などによっては未だ応召義務があるという場合もあり、医療機関側としては負担が重いものといわざるを得ません。
 この場合、医療機関としては弁護士に相談しながら個別対応をして行かざるを得ないですが、安全を確保するために事務職員が診療に立ち会うとか、顧問弁護士が診療に立ち会う等の対応も考えられます。また、判例法上確立はしておりませんが、民事保全法上の接近禁止の仮処分の申立てを行い、近づけないようにしてしまうという方法もございます。
 かように院内暴力についてはその対応法についても確立しておらず、医療機関側にとって悩ましい問題ではありますが、医師の先生方で抱え込むのではなく、警察や弁護士などの専門家に十分相談して、個別的な対応を取られることをおすすめいたします。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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# by motomame | 2014-02-27 09:00
 今回は、最近問題が深刻化している院内における医療従事者に対する患者の暴力・暴言について、その傾向と対策を述べてみたいと思います。

 2008年4月21日に社団法人全日本病院協会の院内暴力等に関する実態調査ワーキンググループは、院内暴力の実態について調査の結果を発表しました。
 それには、回答した1106病院のうち、52.1%の病院が院内暴力の事例を経験しており、院内での患者からの暴力がかなりの頻度で発生していることがわかります。
 しかし、そのうち、警察への届出がなされている事例が5.8%、弁護士への相談がなされている事例が2.1%であり、院内で問題を抱え込んでいる実態が明らかとなっており、医療機関の負担が大きなものとなっている実態が明らかになりました。

 では、このような院内暴力に対してどのような対策をしていけばいいのでしょうか。
 まず、最初に確認していただきたいことは、医療機関における患者からの暴力や暴言についても、法的にはすべて通常の社会生活における暴力や暴言と基本的に異なることはないということです。
 したがって、一般社会で許されない行為は当然、医療機関でも許されるものではありません。
 すなわち、一般社会でその行為が犯罪として構成されるもの、たとえば胸ぐらを掴まれるなどの暴力をふるわれたが怪我をするまでもなかったものについては暴行罪(刑法208条)が成立しますし、患者の暴力によって医師の先生方や他のコメディカルが怪我をした場合には傷害罪(刑法204条)が成立することになります。患者の暴力によって、院内の什器備品を破壊した場合は、器物損壊罪(刑法261条)が成立します。
 また、暴言の中でも、医療従事者に対して身体の危険を与えるがごとく(たとえば「殺すぞ」など)等の言辞を弄した場合、脅迫罪(刑法222条)が成立することになります。

 このように、医師の先生方におかれては、まずかような患者からの暴力、暴言について、一般社会で許されないものについては犯罪行為であるということを是非認識していただきたいと思います。
 したがって、かような暴行や暴言を受けた場合には、自分一人で解決しようとせずに、警察や弁護士に早急に相談されることをお勧めいたします。これらは犯罪であり、また民事上は医療機関が患者に対して損害賠償請求(治療費、慰謝料や治療中断による逸失利益など)をすることができるものであり、法的な対応が必要となってくるものです。
 患者との関係で法的な対応まですぐにはしづらいといわれる医師の先生方もいらっしゃいますが、その対応を誤ると取り返しのつかない被害を被ることにもなりかねないので、是非弁護士や警察などの専門家に相談していただきたいと思います。

  赤井・岡田法律事務所
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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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# by motomame | 2014-02-20 09:00
 前回に引き続き、医療事故が起こってしまった場合の患者さんへの説明について述べていきます。
 今回は、医療事故について、医師側の過失の有無が明らかでない場合からです。

 医師側の過失の有無が明らかでない場合でも、できる限り早期にカルテ等を開示して事実経過を説明すべきでしょう。
  その際に注意すべきことは、「その時点で判明している事実経過」のみを説明すべきであり、「推測」を述べることは厳に避けるべきであるということです。事故直後であればあるほど不明な点が多く、その時点での推測が事実と乖離していたことが後日判明することは往々にしてあることです。また、医師側が専門家の立場から「可能性」として説明した「推測」を、素人である患者さん側が「事実」と誤解してしまうことも十分にあり得ることであり、トラブルの原因になってしまうことがあります。そして、「一貫した説明」を心がけてください。「昨日と今日で言っていることが違う。」とか「言っていることとカルテに書いてあることが違う。」というでのは患者さん側の不信感を強めてしまいます。
  事故の原因(とくに死因)について説明を求められることがあるかもしれません。その時点で考えうるものを説明せざるを得ませんが、①本来、死因は解剖や医学的検証を行ったうえで特定されるものであること、②それゆえ、後日、死因に関する回答が変更される可能性があることを明示しておく必要があるでしょう。
  また、患者さん側から法的責任の有無を問われることも考えられるところです。
過失の有無が明らかでない以上、この時点で法的責任の有無も明らかではありません。
  さらに、この時点で、患者さん側から謝罪を求められることがあるかもしれません。この時点では過失があったか否かが明らかではないのですから、「ミスがあった。」と患者さん側に誤解されるような発言(たとえば、「申し訳ありませんでした。」など)は厳に慎むべきでしょう。調査・検討の結果、過失がなかったと判定された場合、「当初はミスを認めていたじゃないか。」と患者さん側から追及されるおそれがあるからです。「最善の努力をしたつもりですが、このような結果になり残念です。」という程度にとどめておくべきでしょう。
なお、こうした説明をされた場合には、カルテや看護記録にその内容(説明内容のみならず、日時場所、説明者・同席者・患者さん側の出席者の氏名など)を記載しておくことが必要です。その際、「事実」として説明された部分と「推測」として説明された部分を区別して記載することが重要です。

 医療事故について、医師側の過失があきらかな場合は、できる限り早期に、事実経過やミスの内容を説明して、謝罪するのが肝要と考えます。
示談交渉も早期に開始すべきであり、交渉は当該事故に関係する医療行為を行った個人にまかせてしまうというのではなく、「病院」「医院」として行う(大きい組織の場合には、事務長等が窓口ということになるでしょう。)べきでしょう。
 交渉が難航しそうな場合には、早期に弁護士に相談させることをお勧めします。

  赤井・岡田法律事務所
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# by motomame | 2014-02-13 09:00
 10年ほど前のことになりますが、「医療事故市民オンブズマン・メディオ」という団体が、医療事故被害者(その家族や遺族も含まれています。)を対象に、医師や医療機関に対して法的行動を起こした動機などを分析するためにアンケート調査を実施したことがありました。
 そのなかで、「法的行動をとった理由」という項目があり、「怒りを感じたから」(97.4%)、「過誤を認めさせたかったから」(97.3%)、「納得のいく説明が欲しかったから」(96.5%)というのが上位3項目であり、「医師に仕返しをしたかったから(こちらの気持ちにまったく配慮してもらえなかった)」は44.5%、「経済的補償がほしかったから」は37.9%という結果でした。
事故後の対応の不十分さ・不誠実さや、インフォームド・コンセント不足が患者さん側を法的行動にまで至らせてしまう大きな原因となっているのではないかと考えられます。

 上記のアンケート結果をまつまでもなく、医療事故が起こってしまった場合に医師側がまず行うべきことは患者さん側への説明といえるでしょう。
もっとも、医療事故が起こってしまった場合といっても、①医師・医療機関側に過失があきらかにない場合、②過失の有無が明らかでなく調査・検討を要する場合、③過失があきらかな場合、それぞれの場合における患者さん側への説明のあり方は異なってくるのではないでしょうか。

 医療事故について、医師側に過失があきらかにない場合、患者さん側との信頼関係を維持し、その後の無用のトラブルを回避するために、できる限り早期に事実経過を説明すべきでしょう。その際には、当該医療事故が不可抗力であったことを明示する必要があります。
事実経過を説明する際にはカルテ等の記録を積極的に開示して患者さん側に疑念(「ミスがあったのに、それを隠しているのではないか」)を抱かれないような配慮をすべきでしょうし、また、不可抗力であったことを説明する際には医学文献を示し、素人である患者さん側に理解できるように、分かりやすい言葉遣い・表現を心がけるべきでしょう。
なお、最近では、患者さん側から、文書による説明や説明会の開催を求められることがあります。信頼関係を維持するという観点からはこれに応じるべきであると考えられますが、説明文書を作成される際には、後日のトラブルを回避するために、医学的観点のみならず法律的観点からもよくよく検討されることをお勧めします。また、説明会に患者側の代理人(弁護士)が立ち会われる場合には、医師側の代理人(弁護士)も立ち会う方がよいでしょう。

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# by motomame | 2014-02-06 09:00
今回は、治療方法や方針などの説明不足について、お話したいと思います。

1 説明義務について
 まず、医師には、患者さんに対して、治療方法、方針について説明する義務があります。
 医師は、患者さんとの間で診療を実施する際、法的には診療契約を締結することになります。診療契約によって、医師は、患者さんに診療義務が課せられ、患者さんは医師に対して診療報酬の支払義務が課せられます。さらに、医師には、診療義務が課されるだけではなく、治療内容や方針について、患者さんに対して説明をする義務、いわゆる説明義務も課されます。

2 説明義務の法的構成 
 これら説明義務は、専門家が一般の方に実施するサービスについて、往々にして一般の方が内容を理解しずらい場合が多く、そのときに一般の方が的確な判断をすることができなくなる、そこで、一般の方が的確な判断をすることができるために、専門家は、判断のための説明を行うことが必要とされます。
 特に診療の場合、患者さんは治療行為によって、身体を傷つけられる可能性があるところ、患者さんは、自分の治療行為の内容を自ら決定する権利、すなわち自己決定権があるとされています。この自己決定権を正しく行使する前提として、治療の内容をよく知る必要があり、それに対応して、説明をする義務が医療者に課せられるのです。
 医師には、診療内容や方法、方針を十分患者さんに説明する法的義務が課せられていることになります。
 このように説明義務を果たさない場合、医師に損害賠償という相応のペナルティが課せられることになります。

4 説明義務の程度
 では、どの程度の説明をすれば良いのでしょうか。
 裁判所の判決の中には、医療上の行為を行うについて、それが患者の身体に対する侵襲を伴う場合、治療行為の内容及びその危険性について事前に説明する必要があるとしているものがあり、上記の説明義務を認めている次第です。
 ただ、具体的にはどの程度なのかという点については、個別の診療行為によって様々であり、一概にはいえませんが、少なくとも当該治療行為について、その具体的内容、治療期間、治療を受けることによって生じる問題点などは十分説明する必要があるかと思われます。

5 患者さんへ説明を実施するにあたって
 医師の先生方が患者さんに治療内容などの説明を行う際の注意点を若干述べておきます。後で説明を受けた受けていない、言った言わないの争いを避けるためにも説明の重要な部分、特に治療による副作用や弊害については文書で明確にして手渡して頂き、治療についての同意書を取られることもよいかと思います。また説明しているところを録音していただくことも一つの手でしょう。

6 説明義務を果たさなかった場合
 医師が説明義務を果たせなかったときは、どうなるのでしょうか。
 説明義務が果たされなかった結果、患者さんが死亡したり、症状が悪化した場合には、その招来した結果について、損害賠償義務を負うことになります。
 ただ、説明義務自体は果たしていなかったとしても、当時の治療水準に基づいた適切な治療がなされたのであれば、患者の死亡や症状の悪化との因果関係は認められないとされ、せいぜい、自己決定権を奪ったことに対する精神的苦痛を慰謝するための慰謝料の請求が認められることになります。
 他方、説明されたならば、患者さんが治療行為を受けず、そのために死亡や症状の悪化の結果が生じなかったと立証された場合には、死亡や症状悪化についての損害賠償請求を認められることになります。
 いずれにしても、特にその治療内容がリスクを伴う場合には、十分な説明をしていただく必要があります。
 日々の診療の中で、患者さんに十分説明する時間がない現場の事情もあるかもしれませんが、無用なトラブルを避けるためにも是非とも行っていただきたいところです。

7 最後に
 以上、2回にわたり、患者さんからのクレームについて、一番問題となりやすい、①治療内容の不満について、②治療内容についての説明不足について、できる限り平易に説明を差し上げましたが、法的な判断を含むわかりにくいところであります。よくわからないところについては、自己流でなさらずに、一度、弁護士などの法律専門家にご相談されることをお勧めいたします。


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# by motomame | 2014-01-30 09:00