医師・医療従事者・医療機関の方々に対する法律事務所からの情報発信です。弁護士法人 河原町総合法律事務所。


by 弁護士 赤井勝治
 前回の続きです。

 東京地方裁判所平成15年3月20日判決は、医師に医療行為を行うために医療器具を用いる場合には、本来の目的に沿って安全に機能するかどうかを事前点検する義務を認め、さらに、医師に、使用する医療器具の構造上の特徴、機能、使用上の注意等の基本的部分を理解し認識していることを求めています。

 このように当該裁判例における裁判所の判断は、医療機関側にとっては厳しいものでした。

 また、裁判の理由中でも、医師は、人間の生命身体に直接影響する医療行為を行う専門家であり、その生命身体を委ねる患者の立場からすれば、医師にこの程度の知識や認識を求めるのは当然と考えられ、医師に不可能を強いるものとは考えられないとするなど厳しい判断がなされています。

 今回、この裁判例をあげたのは、まずは、このように厳しい判断のなされている裁判例のあることを知っていただくためです。

 ただし、裁判例を検討するにあたっては、その判断中、その事案だけに該当する部分と、広く同種事案に該当する内容とを区別して考える必要があります。
 裁判例の中には、判断のほとんどが、その事案のみにしか該当しない、いわゆる事例判決と呼ばれるものもあります。

 次回は、こうした観点から、この裁判例を検討してみたいと思います。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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# by motomame | 2017-10-19 09:00
 前回の続きです。

 東京地方裁判所平成15年3月20日判決においては、医療器具の製造・輸入販売会社2社の製造物責任のほかに、医師が医療器具を使用するにあたって、事前に点検する義務があるのか否かが争われました。

 医療機関側(東京都)は、この事案で接続して使用された2つの医療器具の外観上では接続の不具合があると判断できないこと、接続した場合の不具合を事前に点検する方法を記載した専門書がなく、過去に本件と類似の接続不具合による事故が報告されていなかったことなどを挙げて、医師には事前に点検する義務はなかったことを主張しました。

 しかし、裁判所は、上記の主張を退け、医師に事前点検する義務を認めました。

 すなわち、まず、医師は、患者に対する適切な医療行為を行うことを職務とするので、医療行為を行うために医療器具を用いる場合には、適切な医療行為を行う前提として、適切な医療器具を選択する必要があり、選択された医療器具は本来の目的に沿って安全に機能するものでなければならないとしました。

 そのうえで、本件で使用された各器具の内容について触れ、各器具を組み合わせて使用する医師としては、少なくとも、各器具の構造上の特徴、機能、使用上の注意等の基本的部分を理解したうえで各器具を選択し、相互に接続された状態でその本来の目的に沿って安全に機能するかどうかを事前に点検すべき義務を負うと判断しました。

 そして、医師が各器具の構造上の特徴、機能、使用上の注意等の基本的部分を理解し認識していれば、両器具を接続した場合に不具合をきたすことを予見でき、また、事前に実際にそれら2つの器具を接続させて不具合がないかを確認することで、接続した場合の機能の安全性を確認しておくことは可能であったとして、これを怠った医師に注意義務違反を認めました。

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# by motomame | 2017-10-12 09:00
 平成19年4月から、医療法により、それまで病院と有床診療所のみが対象となっていた医療安全対策が、無床診療所にも義務づけられています。
 その一環として、医療機関は、使用している医療器具等の医療機器について保守点検を怠らないようにする必要があります。

 この点が問題となった裁判例は多くはありませんが、有名なものとしては、東京地方裁判所平成15年3月20日判決があります。

 この裁判例は、平成13年3月に都立病院において発生した、呼吸回路機器の不具合により乳児が亡くなられた医療事故について、組み合わせて使用された医療器具の製造・輸入販売会社2社の製造物責任と医師を雇用していた東京都の使用者責任が問われた事件についてのものです。

 詳細な事案の紹介は省きますが、この裁判例では、医療器具の製造・輸入販売会社2社の製造物責任と当該器具を使用前に点検しなかった医療機関の責任が認められました。

 医療器具の製造・輸入販売会社2社の製造物責任に関しては、他社製の呼吸回路機器を接続することによって閉塞が起きる可能性があり、そのような場合には医療器具を使用しないよう指示・警告を発する等の措置を取らない限り、指示・警告上の欠陥があり、製造物責任を負うと判断されました。
 また、たとえ医療器具を使用した医師に注意義務違反が認められるからといって、製造物責任を免れられるものではないとの判断も示しました。

 この裁判例では、上記の製造物責任のほかに、医師の医療器具の事前点検義務が争点となりました。
 今回は、この点について、述べたいと思います。

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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# by motomame | 2017-10-05 09:00

広告規制について(4)

 最後に、現時点で、ホームページにおいて、最低でも点検すべきと考えられるポイントをまとめておきます。

 ①虚偽広告の有無
 積極的に偽るつもりがなくても、医学的に見て内容が虚偽と判断されるような内容は避けるべきです。例えば、「絶対に~」といった表現は避けるべきでしょう。

 ②誇大広告の有無
 少しぐらいなら構わないという考えは捨ててください。施設、人員、医療内容などは、誤解を与えることがないよう正確に記載する必要があります。

 ③診療科名
 これまでは看板等では規制に合わせた表記がなされていても、ホームページではかなり自由な記載のなされているのをよく見かけましたので、注意が必要です。ホームページでも、規制に合わせた表記にしてください。

 ④その他、公序良俗に反する内容は絶対にやめてください。また、他の医療機関との比較に基づく記載や医療機関側の主観に基づく記載も避ける必要があります。

 なお、厚生労働大臣の定めや省令に委ねられている事項が多岐にわたるため、これらについては、今後の動向を注視して判断していく必要があります。

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# by motomame | 2017-09-28 09:00

広告規制について(3)

 前回の続きです。

 医療法6条の5で広告の認められる事項②の診療科名は、医業及び歯科医業につき政令で定める診療科名並びに当該診療科名以外の診療科名であって当該診療に従事する医師又は歯科医師が厚生労働大臣の許可を受けたものとされており、この許可に係る診療科名を広告するときは、当該診療科名につき許可を受けた医師又は歯科医師の氏名を、併せて広告しなければならないとされています(6条の6第1項、第4項)。

 また、各号に掲げる事項を広告する場合においては、その内容が虚偽にわたつてはならないものとされています(6条の5第3項)。

 さらに、各号に掲げる事項を広告する場合には、その内容及び方法が、医療に関する適切な選択に関し必要な基準として厚生労働省令で定めるものに適合するものでなければならないとされています(6条の5第4項)。

 そして、都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長は、広告が6条の5第1項、第3項、第4項の規定に違反しているおそれがあると認めるときは、当該広告を行つた者に対し、必要な報告を命じ、又は当該職員に、当該広告を行つた者の事務所に立ち入り、当該広告に関する文書その他の物件を検査させることができるのみならず(6条の8第1項)、当該広告を行つた者に対し、期限を定めて、当該広告を中止し、又はその内容を是正すべき旨を命ずることができるとしています(6条の8第2項)。

 加えて、罰則も規定されており(第73条)、6条の5第3項、6条の6第4項に違反した者は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処するとされています。

 このように新たにホームページ(ウェブサイト)も広告規制の対象となったことから、医療機関は、自院のホームページを点検する必要があります。

 その際には、虚偽広告や誇大広告などが許されないのはもちろんのこと、開業時に作ったままのホームページにおける人員配置や施設基準が現状と異なる場合にも、誤解を招かないように、これらを改訂をしなければなりません。

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# by motomame | 2017-09-21 09:00