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by 弁護士 赤井勝治
 以上のような、受診者側の主張及び病院側の反論を踏まえ、裁判所は、次のように判断しました。

 人間ドックは、疾病、特に癌や糖尿病といった成人病の早期発見と、適切な治療を受けさせるためのアドバイスを主たる目的として行われるものであり、受診者も当時の医療水準における適切な診断とアドバイスを期ヘして人間ドック診療契約を締結するのであるから、人間ドックを実施する医療機関としては、当時の医療水準に照らし、疾病発見に最もふさわしい検査方法を選択するとともに、疾病の兆候の有無を的確に判断して被験者に告知し、仮に異常かあれば治療方法、生活における注意点等を的確に指導する義務を有するというべきである。

 また、人間ドックはいわゆる集団検診とは異なり、健康管理に高い関心を有する者が自発的に受診するものであり、受診者は少しでも異常を疑わせる兆候が存在する場合にはその告知を受け、精密検査を受診することを希望しているのが通常である(それが、癌の存在を疑わせる兆候であればなおさらである。)から、実施する医療機関は、異常を疑わせる兆候があればこれをすべて被験者に告知し、診断が確定できない場合には精密検査あるいは再検査を受けて診断を確定するよう促す高度の注意義務を有するというべきである。

 また、人間ドックにおける検査項目、検査方法及び判定基準については、健保連と日本病院会の間において短期人間ドック契約が締結され、37の検査項目の実施を定め、さらに日本病院会が10の検査項目を追加した47の検査項目で実施するよう実施指定病院に対し指導するとともに、短期人間ドック指導規準を定めて指導していた。

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京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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# by motomame | 2017-07-20 09:00
 これに対し、病院側は、次のように反論しました。

 人間ドックは、傷病等に対する治療行為を前提とした検査とは異なり、健常人を対象とした健康診断であるから、疾病の早期発見という課題の他に、受診者に時間的、経済的負担をなるべくかけずに検査を行い、病気でないものを病気でないと正しく判断し、健常人に不必要な経済的、精神的負担をかけてはならないという課題を有する。

 そして、この両課題を実現するためにいかなる検査方法を取り、いかなる判定基準を設定するかという点に関しては、検査を実施する病院の広い裁量に委ねられていると解すべきである。

 当時便潜血検査は生化学的方法によって行われていたが、生化学的方法はヒト以外の血液にも反応してしまうため、厳格な食事制限を行わない限り異常がなくとも陽性反応が出てしまうこと(これを「偽陽性」という。)が多い。
 しかしながら、人間ドックにおいては、前記のとおり受診者にできるだけ負担をかけないという観点から、厳格な食事制限を行うことは不可能である。
 そこで、当時病院では、人間ドックにおける大腸癌検査は精度の高い大腸内視鏡検査によって行うこととし、便潜血検査は下部消化管のうち特に小腸からの出血の有無を調べるために行っており、大腸癌発見を目的とはしていなかった(病院は受診者に対しても大腸内視鏡検査の受診を勧めたが、同人は受診しなかった。)。

 また、当時病院において用いられていた便潜血検査の方法は、生化学的方法のうちグアヤック法と呼ばれるもので、その試薬としてはシオノギBを用いていたところ、この検査方法は偽陽性率が高く、ワンプラスを陽性と判断すると本来異常のない者に対し不必要な負担を強いることとなり、前記人間ドックに課せられている課題に照らし適切とは考えられなかったため、病院では、ワンプラス以下を異常とは判断せず、ツープラス以上を異常と判断する判定基準を設けていた。

 このように、病院がワンプラスを異常と判断しない判定基準を設けていたことは、人間ドックの目的に照らし合理的なものであり、医療機関の裁量の範囲内といえるものである。

 そして、病院は、この判定基準に照らし受診者の検査結果を異常とは判断しなかったのであるから、受診者に精密検査等を指導しなかったことについて病院には何ら過失はない。

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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# by motomame | 2017-07-13 09:00
 人間ドックは、現在多くの医療機関が実施しており、病気の早期発見のため、あるいは健康診断の代替として利用されています。
 この人間ドックにおいて、検査の見落としがあったなどとして法的紛争になる場合があります。

 そこで、今回は、人間ドックを実施する医療機関や医師が受診者に対してどのような義務を負うのかについて述べてみたいと思います。

 この点について言及した裁判例としては、東京地方裁判所平成4年10月26日判決があります。

 この判決では、人間ドックを実施した病院が、便潜血検査において、ツープラス以上を異常とする判断基準をとり、ワンプラスの患者に対して再検査、精密検査等を促さなかったところ、その患者が癌で死亡した事例につき、実施した病院に過失を認めました。

 それでは、以下、この判決を受診者側の主張、病院側の反論、裁判所の判断の順に見ていきます。
 
 まず、この裁判で、受診者側は次のような主張をしました。

 人間ドック診療契約においては、病院は、受診者の身体に各種疾患が存在しないかどうかを的確に検査し、その結果異常が認められた場合には、それが治療を要するものか否か、精密検査をする必要があるかどうか、継続して経過の観察を行う必要があるか否か等を判断し、受診者に対し、必要な治療、検査、経過観察等の指導を行う義務を負う。

 そして、受診者は、人間ドックにおいて行われた便潜血検査で、連続して陽性反応ワンプラスが認められたので、病院としては、大腸癌等の悪性腫瘍又は消化管潰瘍の存在を疑い、内視鏡検査等の二次検査を自ら行うか、その受診を指導すべき義務があったのにこれを怠り、受診者に対し何らの二次検査、指導を行わなかった。

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# by motomame | 2017-07-06 09:00
 これまで、「法定相続情報証明制度」について説明をしてきました。

 交付された法定相続情報一覧図の写しが、相続登記の申請手続きのみならず、被相続人名義の預金の払戻し等、様々な相続手続きに利用されることで、相続手続きにかかる相続人・手続きの担当部署双方の負担が軽減されることや、本制度を利用する相続人に、相続登記のメリットや放置することのデメリットを登記官が説明することなどを通じ、相続登記の必要性に関する意識の向上を図ることが本制度のねらいとされています。

 この法定相続情報証明制度は、戸籍の束に代替し得るオプションを追加するものであり、これまでどおり戸籍の束で相続手続きを行うことを妨げるものではありません。

 現時点においては、法務局における相続登記手続きは別として、金融機関等が従来の戸籍の束による相続手続きに替えて、法定相続情報証明制度を利用した相続手続きを認めるか否かはそれぞれの判断に委ねられていますが、この制度が普及していけば、相続手続きに関する相続人の負担が、費用・時間の両測面において軽減されることは間違いないところです。

 この制度の運用は、既に述べたように平成29年5月29日に始まったばかりですので、どの程度活用できるのかは、これからの運用状況を見守るしかありません。

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# by motomame | 2017-06-29 09:00
 それでは、「法定相続情報証明制度」の概要について解説します。

 まず、戸籍関係の書類を集めなければならないのは従来と同様です。

 次に、集めた戸籍関係の書類に基づいて、「法定相続情報一覧図」を作成することになります。

 従来と異なるのは、公式のフォーム(書式)で作成することが求められています。

 具体的には、①法定相続人が配偶者および子である場合、②法定相続人が子のみである場合、③法定相続人が配偶者および親(父母)である場合、④法定相続人が配偶者および兄弟姉妹である場合、⑤代襲相続が生じている場合、⑥父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹がいる場合に分けて、

法定相続情報一覧図の様式および記載例が、法務局のHP上(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000015.html)で公開され、エクセルのデータとしてダウンロードできるようにされています。

 従来の「相続関係図」は、各申請窓口の担当者がチェックを行っていましたが、「法定相続情報一覧図」は法務局の登記官がチェックを行います。戸籍の束を提出しなければならない点は従来と同様です。

 相続人が特定されていることの確認がなされれば、認証文付きの法定相続情報一覧図の写しが交付されます。
 法定相続情報一覧図の写しの交付それ自体には費用はかかりません(郵送料は別途かかります)。

 被相続人名義の不動産がない場合(たとえば、遺産が銀行預金のみの場合)でも利用することが可能で、法定相続情報一覧図の写しは、相続手続に必要な範囲で、複数通交付を受けることが可能です。

 また、提出された法定相続情報一覧図は、登記所において5年間保管され、その間は、法定相続情報一覧図の写しの再交付を求めることが可能です。ただし、再交付を申し出ることができるのは、当初、一覧図の保管等申出をした申出人に限られ、他の相続人が再交付を希望する場合には、当初の申出人からの委任が必要とされています。

 なお、相続情報証明制度は、被相続人や相続人が日本国籍を有しないなど、戸除籍謄抄本を提出することができない場合は利用することができません。

 また、被相続人の死亡後に子の認知があった場合や、被相続人の死亡時に胎児であった者が生まれた場合、法定相続情報一覧図の写しが交付された後に廃除があった場合など、被相続人の死亡時点に遡って相続人の範囲が変わるようなときは、当初の申出人は、再度、法定相続情報一覧図の保管等申出をすることができます。

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# by motomame | 2017-06-22 09:00