医師・医療従事者・医療機関の方々に対する法律事務所からの情報発信です。赤井・岡田法律事務所HP: http://www.akai-okadalaw.com


by 弁護士 赤井勝治

<   2017年 08月 ( 4 )   > この月の画像一覧

 これまでに述べたことから分かるように、医師が虚偽の診断書等を作成して、刑法上、文書偽造罪として罰せられるおそれがあるのは、医師が公務員である場合、および公務員でない医師が公務所に提出すべき診断書等を作成した場合です。

 公務員でない医師が、虚偽の診断書等を作成しても、それが公務所ではなく私人や保険会社に提出する診断書等であれば、少なくとも刑法上、文書偽造罪として罰せられることはありません。

 医師が同じように虚偽の診断書等を作成しても、身分が公務員であるかどうかや、その診断書等の提出先によって、刑法上の罪が成立したり、しなかったり、あるいは罪に軽重があるというのは、違和感をお持ちになるかもしれませんが、現行刑法上は、このように規定されています。

 なお、くれぐれも、刑法上罰せられるおそれの有無にかかわらず、どのような場合であっても、虚偽の診断書等を作成することなどないようにお願いしたいと思います。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
[PR]
by motomame | 2017-08-31 09:00
 まず、公務員である医師が、虚偽診断書を作成した場合には、虚偽公文書作成罪として処罰される可能性があります。
 通常、診断書には作成した医師が押印をされるでしょうから、法定刑は、1年以上10年以下の懲役となり、かなり重い罪となります。

 次に、公務員でない医師が虚偽診断書を作成した場合には、虚偽診断書等作成罪として処罰される可能性があります。
 この虚偽診断書等作成罪が成立するのは、医師が「公務所に提出すべき」「診断書」、「検案書」又は「死亡証書」に「虚偽の記載」をしたときです。

 「公務所に提出すべき」とは、公務所(役所等)に提出することが法令上義務づけられている場合だけでなく、公務所に提出することが予定されている場合も含み、現に作成された診断書等が公務所に提出されたか否かは問いません。

 「診断書」とは、医師が診察の結果に関する判断を表示して、人の健康上の状態を証明するために作成する文書をいいます。

 「検案書」とは、死亡後に初めて死体を検案した医師が、死亡の事実(死因や死期等)を医学的に確認した結果を記載した文書をいいます。

 「死亡証書」とは、生前から診療にたずさわっていた医師が、その患者が死亡したときに、死亡の事実を確認して作成する、いわゆる死亡診断書のことをいいます。

 「虚偽の記載」とは、客観的事実に反する一切の記載(病状、死因、死亡日時等)を意味します。

 この虚偽診断書等作成罪の法定刑は、3年以下の禁錮又は30万円以下の罰金とされています。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
[PR]
by motomame | 2017-08-24 09:00
 近時、虚偽診断書作成のニュースが世間を騒がせていましたが、今回は、虚偽の診断書を作成した場合、どのような罪を問われるかについて述べたいと思います。

 虚偽診断書の作成は、文書偽造罪の一種として刑法に規定されています。

 そもそも文書偽造罪が処罰されるのは、文書に対する関係者の信用を保護するためとされています。
 そして、文書に対する信用の中核は、その文書がそれを作成したとされる名義人によって真実作成された点にあると考えられています。
 そのため、原則として、文書偽造罪は、作成名義人以外の者が、権限なしに、その名義を用いて文書を作成した場合に成立するものとされています。

 ただし、これには例外があります。

 まず一つ目としては、公務員が職務上作成する文書(公文書)についてです。
 この公文書は、その内容の真実性に対する信用まで保護する必要があることから、作成権限のある公務員が内容虚偽の文書を作成した場合にも処罰されます(虚偽公文書作成罪、刑法156条)。

 例外の二つ目としては、医師が公務所に提出すべき診断書等についてです。
 この公務所に提出すべき診断書等についても、公文書と同様、その内容の真実性に対する信用まで保護する必要があることから、作成権限のある医師が内容虚偽の公務所に提出すべき診断書等を作成した場合にも処罰されます(虚偽診断書等作成罪、刑法160条)。

 医師が、虚偽診断書を作成した場合には、上記のいずれかの罪に問われる可能性があります。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
[PR]
by motomame | 2017-08-10 09:00
 今回も「裁判所の判断」の続きからです。

 当時、便潜血検査が下部消化管からの出血の有無を診断するための検査方法として広く行われており、大腸癌の第一次的スクリーニング方法としてある程度の有効性が認められており、日本病院会も昭和59年4月以降は人間ドックにおいて便潜血検査を消化管の疾患の検査として行うよう指導するとともに、指導基準を定めて、陽性反応(ワンプラス)が出た場合には3か月後に再検査を行うよう指導していたのであるから、被告病院が実施した受診者に対する便潜血検査においてワンプラスの結果が出た以上、他の検査結果等によって病的出血の可能性を完全に否定できる等の特段の事情がない限り、病院には受診者にその検査結果を告知するとともに、病的出血か否かを確定するために再検査あるいは精密検査を受診するよう促すべき義務があったものというべきであり、それを怠った病院には過失があるといわざるをえない。

 病院がワンプラスを異常とは判断しない基準を採用していたことは、当時人間ドックに対し一般的に期待されていた検査方法を病院の独自の判断で変更したものというほかはなく、医学的にはそれなりの合理性があるものとしても、それが実施医療機関の裁量の範囲内にあると認めることはできない。

 病院が独自の見地から、ワンプラスを異常とは判断せず、受診者に対し再検査あるいは精密検査の受診を促さなかったことは、少しでも異常を疑わせる兆候があればこれを被検者に告知し、再検査あるいは精密検査の受診を促すべき実施医療機関に課せられた注意義務に違反するものであるから、病院には、実施医療機関として負うベき注意義務を怠った過失があるというベきである。


 この裁判例からすれば、人間ドックを実施する医療機関や医師は、受診者に対し、実施する際の医療水準に照らし、疾病発見に最もふさわしい検査方法を選択するとともに、疾病の兆候の有無を的確に判断して被験者に告知し、仮に異常かあれば治療方法、生活における注意点等を的確に指導する義務を有するということになるものと考えられます。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
[PR]
by motomame | 2017-08-03 09:00