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by 弁護士 赤井勝治

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 前回に引き続き、後遺障害診断書についてです。

 交通事故における損害賠償の考え方としては、まず怪我が治癒した時期ないしは、この「症状固定」の時期(何年何月何日)を特定します。

 そして、原則として、賠償の対象となる治療費や休業損害補償、慰謝料は、この怪我が治癒した時期ないしは、「症状固定」の時期までに発生したものに限られます。

 この「症状固定」の時期以降の損害賠償については、後遺障害が認められる場合にのみ、その後遺障害の程度に応じて、本来その後遺障害がなければ労働によって得られたはずの利益(これを「逸失利益」といいます)及び後遺障害による慰謝料が賠償の対象となります。

 したがって、この「症状固定」の時期をいつにするのかは、損害賠償請求において、重要なファクターとなります。

 そして、前記のように、その判断は、最終的には裁判官ないしは保険会社が行うことになるのですが、その判断に決定的とも言えるほど大きな影響を与えるのが、医師によって作成される後遺障害診断書に記載される「症状固定」の時期の記載です。

 これを記載する医師としては、このような事情を十分に認識したうえで、当該患者さんが、前記の「症状固定」の定義にあてはまる状態になったのがいつなのかを慎重に判断して記載いただきたいと思います。

 現実には、患者さんが後遺障害診断書の作成を依頼されて、診察を受けられた日に、医師として、患者さんが前記のような状態にあると認められれば、その日を「症状固定」の時期と判断して記載されることが多いものと考えられます。
 ただ、診療録などの記載等からこれより前の時期が相当であると判断される場合には、その時期を記載いただきたいと思います。

 また、仮に、医師として、患者さんが未だ前記の「症状固定」の定義にあてはまる状態にはなっていないと判断される場合には、その旨を患者さんに説明していただき、現時点で後遺障害診断書を作成すべきか否かを再度検討していただくよう患者さんにお伝えください。

 患者さんのみならず、保険会社の担当者の中にも、「症状固定」の時期を決定するのは医師であると勘違いされている方が多くいらっしゃいますが、それは誤解です。
 医師からも、自分は、あくまで医学的見地から、「症状固定」の時期を決定するための資料として後遺障害診断書を作成するにすぎず、決定するのは自分ではない旨説明いただいても良いと思います。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2016-07-28 09:00
 さらに、民事上の損害賠償請求のために使用する診断書としては、事故直後に作成される診断書のほかに、後遺障害診断書というものがあります。

 これは、その字のとおり、患者さんの交通事故による後遺障害についての診断内容を記載するものですが、その使用目的は、少々特殊といえます。

 すなわち、ここでいう「後遺障害」は、医学上いわれる「後遺症」とは異なり、自動車損害賠償保障法及び自動車損害賠償保障法施行令に準拠した交通事故に特有のものです。
 最も近いものが、労災における後遺障害ですが、これに準じてはいるものの、微妙に異なる部分もあります。

 その使用目的は、交通事故によって生じた後遺障害に基づく損害の賠償請求のためということになりますが、これを理解していただくためには、「症状固定」という概念を避けて通れません。

 ここでいう「症状固定」というのは、保険業界の造語であると言われており、損害賠償・保険論的な概念です。
 その「症状固定」の時期についての最終判断権者は訴訟になった場合には裁判官であり、示談により保険会社から保険給付を受ける場合には保険会社になります(請求者からの提示を保険会社が受け容れなければ、示談による解決は図れず、訴訟になるという意味でいえばそのようになります)。

 そして、この「症状固定」とは、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態であり、投薬・理学療法により症状の一時的な回復が見られるに過ぎない場合をいいます(平成12年に労働基準監督署から出された「労災保険における傷病が治ったとは」という定義と同一内容になります)。

 ここに「医学上一般に認められた医療」とは、労災保険の療養の範囲(基本的には健康保険に準拠)として認められたものを指します。

 また、「投薬」には、外用薬(軟膏、クリーム、ゲル、湿布、膏薬など)、注射(皮下、筋肉内、間接内、腱鞘内、静脈内注射、各種神経ブロック)も含まれ、「理学療法」には、西洋医学以外のいわゆる補完代替療法(CAM)と呼ばれるマッサージ、鍼灸、整体・矯正も含まれるものと考えて差し支えないと思われます。

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by motomame | 2016-07-21 09:00
 次に、診断書は被害者から加害者に対する民事上の損害賠償請求のために使用されます。

 ここでは、主として、賠償金額を決めるために使用することになります。

 具体的には、どのような治療を要するものであるのか(治療費)、どれくらいの期間仕事等を休む必要のあるものであるのか(休業損害補償)、治療のための入院・通院についてどれくらいの期間を要するものであるのか(慰謝料)といったことを決める資料となります。

 したがって、ここでは傷病内容が、重要な意味を持ちます。

 これが、医師によって、まちまちなうえ、よく分からないような内容の傷病名の記載が散見されます。たとえば、「外傷性~炎」などといったものがそれです。

 本来であれば、交通事故による怪我なので、交通事故の発生日に受傷し、その受傷機転もはっきりとしていて、しかも外傷であって、受傷直後から診断時までその症状がずっと継続しているはずです。

 そうだとすれば、診断書の傷病名は、自ずと外傷の病名となるはずです。

 そして、その外傷の病名は、基本的には、解剖学的部位名に外傷(損傷)態様を加えたものになると考えられます。
 ここでいう解剖学的部位名については、医師の専門分野ですのでここでは触れません。
 外傷(損傷)態様については、これも医師の専門分野ではありますが、あえて書かせていただくと、次のようなものです。
 すなわち、骨折、脱臼、断裂、打撲、捻挫、破裂、挫傷、挫滅、出血・血腫、挫傷(皮下損傷)、挫創(切創、割創、刺創、挫滅創、擦過創)などとなります。

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by motomame | 2016-07-14 09:00
 前回に引き続き、被害者が警察に提出する診断書の記載についてです。

 加療期間の見込みを記載していただく際には、その起算日は原則として、受傷日(事故日)からですが、受傷日からなのか本日(当該診断書発行日)からなのかを記載していただけると丁寧です。

 前回は、軽微な怪我については、2週間以内の期間で記載していただくのが弁護士の立場からすれば、相当であろうと考えている旨を述べました。

 逆に、実際には患者さんが重い傷害を負っている(負っている可能性がある)にもかかわらず、あまりに短い加療期間を記載してしまうと、その加害者の刑事処分が不当に軽くなってしまうおそれがあるため、こちらも注意が必要です。

 さらに、起訴された場合でも、裁判所が刑の軽重を決めるにあたっては、この加療期間が大きく影響します。
 刑を決めるにあたっての重要なファクターは、犯行(事故)態様、その結果、及び結果に対する賠償の有無等です。

 交通事故の場合には、酒気帯び、スピード違反、信号無視などの悪質な事情がない場合には、一律に過失犯(故意にではなく、不注意で犯してしまった犯罪)として扱われ、しかもほとんどの場合には加害者が対人無制限の任意保険に加入していて保険会社からの賠償が見込まれますので、結局、加療期間の長短という結果の軽重が刑を大きく左右することになります。

 行政処分というのは、運転免許に関する処分のことです。

 違反点数によって、この行政処分が定められていますが、人身事故の場合には、治療期間によっても、この点数が決まってくるため、期間が長いほど、重い行政処分を受ける可能性が高いことになります。

 治療期間のほかにも、事故態様なども考慮されますが、治療期間だけで見ると、たとえば、死亡事故だと免許取消、15日以上だとその期間に応じて30日間から90日間までの免許停止処分となります。

 ここでも、2週間を超えると、原則として免許停止処分になってしまうことになります。

 警察に提出するための診断書については、以上のような目的で使用されますので、その作成にあたっては、自ずとその使用目的に応じた記載をすることが求められることになります。

 形式的な記載事項は、患者さんの氏名・生年月日、傷病名、治療期間見込、診断書作成日、作成医師名ということになります。
 そして、傷病名については、前記のように、受傷した部位と外傷の内容(捻挫、打撲、骨折等)で足ります。

 そして、最も重要な治療期間見込については、前記のような事情をご理解いただいたうえで記載いただければと思います。

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by motomame | 2016-07-07 09:00