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医師・医療従事者・医療機関の方々に対する法律事務所からの情報発信です。赤井・岡田法律事務所HP: http://www.akai-okadalaw.com


by 弁護士 赤井勝治

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 前回の続きです。

 そこで、もう一つの考え方としては、次のようなものが考えられます。

 もはや病気の治癒に向けて効果の見込まれる治療行為を行うことが医学上不可能であり、単に延命のみを目的とした措置のみが行われるような場面であっても、医師、医療機関の負う注意義務については、特別に考えずに通常の場合と同様に考えるとしながら、これによる不都合については、説明義務の問題として捉えるという考え方です。

 すなわち、全身状態の良くない患者さんに対して、患者さん本人やその親族などから、最後まで病気の治癒に向けての治療行為をして欲しい旨の希望がある場合、医師、医療機関はこれに応える義務があるとしながらも、そのような全身状態の良くない患者さんに対する治療行為にあたっては、かかる行為により生じるリスクを十分に説明し、そのうえで行う場合には、そのリスクが現実化しても注意義務違反には問わないとする考え方です。

 これによれば、注意義務を尽くすことを条件に、医師、医療機関に対して、通常の場合以上の高い注意義務を課すことを回避することが可能になると考えられます。

 終末期医療でなくても、全身状態の良くない患者さんに対する治療行為というものは存在しますので、その場合と同様に考えれば良いとする考え方です。

 ただ、説明義務を尽くすことを条件としますので、そのこと自体が医師、医療機関に対して、重い義務を課すことにならないかとの疑念は残ります。

 以上のように、今回は、終末期医療における医師、医療機関の義務について考察してきました。

 我が国では、65歳以上の方が、全人口の26%を占める超高齢化社会になっています。このような超高齢化社会においては、今後、終末期医療における様々な問題が議論されるようになるものと思われます。

 今回考察した点についても、今後、議論されることを期待したいと思います。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2016-04-28 09:00
 いわゆる終末期医療で、単に延命のみを目的とした措置のみが行われる場面では、当該措置として適切かどうかが問題とされるべきという考え方についての続きです。

 このような考え方によれば、医師、医療機関は、過剰なリスクに晒されずに済むのではないかと考えられます。
 すなわち、もはや病気の治癒に向けて効果の見込まれる治療行為を行うことが医学上不可能であり、単に延命のみを目的とした措置のみの行われる場面での患者さんの容態は、通常、全身状態が良くないことがほとんどであろうと想定されます。

 したがって、このような全身状態の良くない患者さんに対して、何らかの治療行為を行うに当たっては、細心の注意が必要となります。
 ほんの些細な不注意によっても、死亡という重大な結果を招き、延命ができなくなってしまうおそれがあります。

 にもかかわらず、患者さん本人やその親族などの最後まで病気の治癒に向けての治療行為をして欲しい旨の希望に応えなければならないとすれば、医師、医療機関は、通常の場合以上の高い注意義務が課されることになりかねません。
 しかし、そもそも患者さん本人やその親族などのそのような希望に応えなくて良いのであれば、医師、医療機関は、細心の注意をはらってまで治療行為を行う必要がなくなります。

 ただし、このような考え方に対しては、強い批判の出ることが考えられます。

 今日の医療現場において、また医療訴訟においても、患者さんの意思というものが最優先で考慮されますが、上記の考え方は明らかにこのような患者さんの意思を無視することになるからです。

 したがって、現状では、上記のような考え方が採られることはないか、極めて困難であると言えるでしょう。

 では、どのように考えれば良いのでしょうか。

 法は、不可能や困難を強いるものであってはなりません。

 したがって、患者さんの意思を最優先に考慮するとしても、医師、医療機関に困難を強いることにならないように考える必要があります。

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by motomame | 2016-04-21 09:00
 前回、いわゆる終末期医療においては、もはや病気の治癒に向けて効果の見込まれる治療行為を行うことは医学上不可能であるとして、単に延命のみを目的とした措置のみが行われる場面があり、このような場面において、医師、医療機関が負う義務については、通常の場合とは違った内容の注意義務を検討すべきという考え方があり得る旨述べました。
 すなわち、当該場面においては、単に延命のみを目的とした措置のみが行われるのだから、当該措置として適切かどうかが問題とされるべきという考え方があり得るということです。

 理論的には、このような考え方もあり得ると思われるのですが、私の知る範囲では、この点について論じたものは見当たりませんでした。

 したがって、以下は私の推論であることを、あらかじめお断りしておきます。

 この考え方によると、まずは、そもそも病気の治癒に向けて効果の見込まれる治療行為を行うことが医学上不可能な場面であるという判断自体が適切であったかどうかが問題となるでしょう。

 そして、この判断が適切であったとすれば、仮に患者さん本人やその親族などが、通常の場合と同様に、最後まで病気の治癒に向けての治療行為をして欲しい旨希望したとしても、医師、医療機関は、そのような治療行為を行う義務は負わないということになります。

 ただ、患者さん本人やその親族などが、延命措置を望んだ場合には、医師、医療機関は、適切な措置を行う義務を負うことになるものと考えられます。

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by motomame | 2016-04-14 09:00
 医師、医療機関は、患者さんとの診療契約に基づき、患者さんに対して治療目的に沿った適切な治療行為を行う義務を負っています。

 通常の病気の治癒に向けて効果の見込まれる場面においては、医師、医療機関が上記の義務を負うことについて、特に問題はないものと思われます。
 しかし、いわゆる終末期医療においては、もはや病気の治癒に向けて効果の見込まれる治療行為を行うことは医学上不可能であるとして、単に延命のみを目的とした措置のみが行われる場面が存在します。

 このような場面において、医師、医療機関が負う義務については、通常の場合と同じなのでしょうか。それとも通常の場合とは負うべき義務の内容に違いがあるのでしょうか。

 今回は、この点についての考察をしてみたいと思います。

 まず、一つの考え方としては、通常の場合とは違った内容の注意義務を検討すべきという考え方があり得ると思われます。
 すなわち、病気の治癒に向けて効果の見込まれる場面においては、治療目的に沿った適切な治療行為を行う義務というものが注意義務の内容を構成します。
 これに対し、もはや病気の治癒に向けて効果の見込まれる治療行為を行うことが医学上不可能な場面では、これと同様に考えることはできず、単に延命のみを目的とした措置のみが行われるのだから、当該措置として適切かどうかが問題とされるべきという考え方です。

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by motomame | 2016-04-07 09:00