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by 弁護士 赤井勝治

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 既に述べてきたように医療行為が社会的に正当な行為と評価されているからこそ、刑事責任を問われないということと、そもそも安易な刑罰権の発動は慎まれなければならないということからすれば、医療事故において刑罰権を発動すべき場合については、その際に行われた医療行為が社会的に正当な行為とは評価できない程度に相当性を欠いていた場合に限定して考えるべきであるということになります。

 このような思考過程を経て、医療事故における刑事処罰についての私の考えは以下のようになります。

 すなわち、私は、医療行為であるという理由だけで、刑罰(業務上過失致傷罪等)の適用を差し控える必要はないと考えています。
 もとより医療行為には患者の生命身体に対する危険がつきものであり、しかも、医師はその時々で専門的知見に基づく迅速な判断が求められます。
 そういった意味で、医療行為については、医師に一定の裁量が認められてしかるべきであり、その裁量が社会的な相当性を逸脱するものではない限り、その裁量の範囲内であれば当・不当の問題は生じたとしても、安易に刑事責任が課されるようなことはあってはならないと思います。

 そうでなければ、医師は結果責任をおそれるあまり、リスクのある治療行為や先進的な医療行為を行うことを躊躇し、従来から行われている無難な治療行為に終始することとなり、結果的に医療技術の進歩を妨げるなどの弊害が生じかねません。

 また、責任を回避するために、より高次の医療機関へのたらい回しなどの問題も発生することになります。

 このように、私は、医療行為に対する刑罰権の発動は慎重に行われることが強く要請されるものと考えています。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2015-11-26 09:00
 既に述べたとおり、安易な刑罰権の発動は慎まれなければならないと考えられます。

 そもそも医療行為は、その性質上、人の生命身体に対する侵襲行為を伴い、生命身体に対する危険がつきまとうものです。

 そうであるからこそ、大学で高度な専門知識を学び、医師という国家資格を有するに至った者のみが行うことを許されているのです。
 すなわち、本来、医療行為そのものは、傷害罪等にあたりうる行為なのですが、医師が行うことで、社会的に正当な行為として違法性がないとされています。

 これは、言い換えれば、現在の社会において、医療行為は、人の生命身体に対する侵襲行為を伴い、生命身体に対する危険を有するものであることを前提とした上で、資格を有する医師が行うことを条件に、病気の治療等のためには必要なものであるとして許容されているということにほかなりません。

 よって、医師でない者が同じ行為を行えば、医師法違反のみならず、傷害罪等に問われることになります。

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by motomame | 2015-11-19 09:00
 患者の取り違えや投与した薬品の誤りといった単純な過失によらない事案については、どのように考えるべきでしょうか。

 今日、医療は高度に専門分化しており、医療行為についても、高度な専門的知見に基づく迅速な判断・対応の求められるものが少なくありません。
 そのような医療行為の特性からして、医療事故においては、民事上の賠償責任の有無を判断することでさえ容易ではないことがほとんどです。
 そして、そもそも刑罰権の発動は謙抑的になされるべきであるという要請があることから、民事上の賠償責任すら否定されるようなケースにおいては、通常、刑事責任が肯定されることはないものと考えられます。

 民事責任を追及された場合であっても、医療従事者は、訴訟提起をされて被告としての対応を余儀なくされるなど、その負担は決して軽いものではありません。

 これが刑事責任の追及となると、医療従事者の被る負担は半端ではありません。
 仮に逮捕・勾留までされれば、身柄拘束という最大の自由制限を受けることになります。
 また、逮捕されたというだけで、世間からはあたかも有罪であることが確定したかのような評価や取扱を受けるおそれがあります。
 いくら、法律上は、裁判で有罪が確定するまでは無罪の推定が働くのだと言ってはみても、そこに世間の風評を左右するだけの力はありません。

 このように刑事責任を追及される立場に立たされること自体が、医療従事者にとっては耐え難い重い負担となります。

 このような観点からすれば、安易な刑罰権の発動は慎まれなければならないと考えられます。

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2015-11-12 09:00
 過去にこのブログでは、福島・大野病院事件を取り上げたことがあります。

 その際にも、医療事故における刑事処罰についての私の考えを述べさせてもらいましたが、今回、再度、具体的な事例から離れて、一般的に考察してみたいと思います。

 医療事故において、医療従事者の刑事責任が問題とされる事案は、患者の取り違えや投与した薬品の誤りといった単純な過失による事案がその大半を占めるものと思われます。

 そもそも医療事故における刑事責任は、これを全面的に否定すべきとの考えもあるようですが、そのような考えは一般的ではありません。

 そして、上記のような単純な過失による事案については、チーム医療という要素がからめば誰が責任を負うのかといった別の問題が発生しますが、担当した医療従事者のいずれかが刑事責任を負うべきであるという結論については、異論を唱える方は少数なのではないでしょうか。

 これに対して、上記のような単純な過失によらない事案については、どのように考えるべきでしょうか。

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by motomame | 2015-11-05 09:00