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by 弁護士 赤井勝治

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 前回は、たとえ「法令に基づく場合」であったとしても、正当な目的や必要性がなく、また必要な範囲を超えて個人情報を漏洩したような場合には、損害賠償請求の認められる余地があり、この点、「個人情報保護法に関するQ&A」の記載については、これを鵜呑みにするのではなく、きちんと内容を理解する必要がある旨まで述べました。

 まず、「個人情報保護法に関するQ&A」が、裁判所からの調査嘱託については、裁判所からの要請には本人の同意なく応じても問題ないとしているのは、民事上の紛争についての法的判断権限を付与されている裁判所が、調査嘱託を採用して回答を求めるにあたり、正当な目的や必要性、回答を求める範囲について判断をしている以上、不法行為が成立することはないと考えているからではないかと思われます。

 次に、警察・検察庁からの捜査関係事項照会については、プライバシー権の侵害に当たるとして民法により損害賠償請求される危険性は理論上ありえるものの、裁判にまで発展する可能性はそれほど高いとは考えられないとしているのは、警察・検察庁という国家機関が正当な目的や必要性、回答を求める範囲について判断をしている以上、不法行為が成立するとして裁判で争われる可能性はほとんどないと考えているからではないかと思われます。

 これらに対して、弁護士会からの23条照会については、弁護士会の行う正当な目的や必要性、回答を求める範囲についての判断が、裁判所や警察・検察庁といった国家機関と比べて、その信用性が低いと考えているからではないかと思われます。
 その結果として、弁護士会からの23条照会については、プライバシー権等の侵害に当たるとして損害賠償請求される危険があるので、本人の同意書をつけてもらえば回答する旨回答するのが安全であるとされているのでしょう。

 弁護士としては、このような取扱をされることに対しては、忸怩たる思いがありますが、現実にこのような対応が推奨されてしまっている以上、不満ばかりを口にしても始まりませんので、弁護士会がしっかりと正当な目的や必要性、回答を求める範囲についての判断を行い、医療機関の信頼を得ていくほかありません。

 なお、裁判所からの調査嘱託、警察・検察庁からの捜査関係事項照会、弁護士会からの23条照会のいずれについても、これらに応じなかったからといって、罰則があるわけではありません。

 ただ、正当な理由なく応じなかった場合には、回答を拒否したことが違法であると判断される可能性があり、回答を拒否したことで照会者に損害が生じた場合には、損害賠償を請求されるおそれがあります。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2015-10-29 09:00
 前回は、裁判所、警察・検察庁、弁護士会のいずれからの照会に回答をしても、秘密漏示罪に問われる可能性はほとんどないのに対して、個人情報の保護に関しては、個人情報保護法には違反しないとしても、個人のプラバシー権を侵害したとして、民事上の損害賠償を請求されるおそれがあるというところまでを述べました。

 この点、そもそも個人情報保護法は、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めたものです。

 この法律では、個人情報が漏洩した場合に、それによってプライバシー権等を侵害された者からの損害賠償などについては規定されていません。
 そのような場合については、民法の規定に従うことになり、不法行為(民法709条)が成立する場合には、プライバシー権等を侵害された者からの損害賠償請求が認められます。

 ここに不法行為が成立する場合とは、故意又は過失によって情報を違法に漏洩し、これによって他者のプライバシー権等を侵害して精神的苦痛を与えるなどの損害を生じさせた場合が想定されます。
 ただし、これまで述べてきた照会に対する回答のように「法令に基づく場合」には原則として違法ではないと考えられるので、不法行為は成立しない場合が大半であろうと考えられます。

 しかしながら、たとえ「法令に基づく場合」であったとしても、正当な目的や必要性がなく、また必要な範囲を超えて個人情報を漏洩したような場合には、もはや違法でないとは言えなくなるため、損害賠償請求の認められる余地が出てきます。

 この点、「個人情報保護法に関するQ&A」の記載については、これを鵜呑みにするのではなく、きちんと内容を理解する必要があります。

 上記のように個人情報を開示した場合、その開示について、正当な目的や必要性が認められ、必要性の認められる範囲で開示をしていれば、たとえ個人のプラバシー権等を侵害したとしても、民事上の不法行為は成立せず、損害賠償責任を負うことはないものと考えられます。

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by motomame | 2015-10-22 09:00
 これまでに述べたように、医療機関が、情報照会を受けた場合には、医師等の守秘義務に反しないか、個人情報取扱事業者として個人情報保護法に違反しないかに配慮しなければなりません。

 このうち、医師等の守秘義務については、裁判所、警察・検察庁、弁護士会のいずれからの照会に対する回答も、原則として、正当な理由のある場合に該当するので、秘密漏示罪に問われることまずないと考えてもよいでしょう。

 そもそも刑事罰の発動は謙抑的であるべきとの観点からしても、このような照会に対する回答が罪に問われる可能性は、ほとんどないものと考えられます。

 次に、個人情報取扱事業者として個人情報保護法に違反しないかについても、裁判所、警察・検察庁、弁護士会のいずれからの照会に対する回答も、「法令に基づく場合」に該当するので、同法違反にはならないものと考えられます。

 ただし、前記の「個人情報保護法に関するQ&A」では、いずれからの照会であるかによって、その対応に差を設けています。
 これは、どうしてでしょうか。

 先に述べたように、秘密漏示罪については、刑事罰の謙抑性の見地から、いずれからの照会に対して回答をしても、そのことで罪に問われる可能性は、ほとんどないものと考えられます。

 これに対して、個人情報の保護に関しては、個人情報保護法には違反しないとしても、個人のプラバシー権を侵害したとして、民事上の損害賠償を請求されるおそれがあります。

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by motomame | 2015-10-15 09:00
 医療機関が、裁判所、警察・検察庁、弁護士会からの照会を受けた場合の対応の際に問題となるのが、守秘義務と個人情報の保護についてです。

 守秘義務については、刑法に秘密漏示罪(刑法134条1項)が規定されています。
 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師は、「正当な理由がなく」その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられます。

 ここに「正当な理由がなく」とは、「違法に」という意味であり、正当な理由がある場合には、違法性が阻却され、秘密漏示罪は成立しません。
 たとえば、漏示が法律上の義務である場合には、違法性が阻却されるので、秘密漏示罪は成立しません。
 なお、この罪は親告罪とされていますので、告訴がなければ、処罰されることはありません。

 次に、個人情報の保護については、個人情報保護法が規定しており、個人情報取扱事業者は、「法令に基づく場合」には、あらかじめ本人の同意を得ないでも、個人データを第三者に提供することが認められています。

 この点、医療機関では、社団法人全日本病院協会個人情報保護担当委員会編著による「個人情報保護法に関するQ&A」がよく利用されていると思われますので、これを見てみることにします。

 これによると、裁判所からの調査嘱託については、裁判所からの要請には本人の同意なく応じても問題なく、それは裁判所が法的判断をする権限を付与されている機関であるからとされています。

 また、警察・検察庁からの捜査関係事項照会については、「法令に基づく場合」に該当するので、同法違反にはならない。プライバシー権の侵害に当たるとして民法により損害賠償請求される危険性は理論上ありえるものの、裁判にまで発展する可能性はそれほど高いとは考えられないので、回答するか否かについては、個々の施設において判断すべきものとされています。

 さらに、弁護士会からの23条照会については、「法令に基づく場合」に該当するので、同法違反にはならないが、プライバシー権の侵害に当たるとして民法により損害賠償請求される危険がある。よって、本人の同意書をつけてもらえば回答する旨回答するのが安全であり、本人の同意書を得られない場合は、回答をしない方が損害賠償請求される可能性がないという点では安全であるとされています。

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by motomame | 2015-10-08 09:00
 医療機関に対して、公の機関などから情報照会のなされることがあります。

 多くの医療機関では、これまでに何度も経験されていることとは思いますが、今回は、この医療機関に対して情報照会がなされた場合の対応等について述べてみたいと思います。

 医療機関に対する情報照会には様々なものがありますが、ここでは、裁判所、警察・検察庁、弁護士会からの各照会を取り上げます。

 まず、裁判所からの照会としては、調査嘱託(民事訴訟法186条)があります。

 そのほかに、文書送付嘱託(民事訴訟法226条)や証拠保全手続(民事訴訟法234条)もありますが、照会とはやや性格を異にする手続と考えられるので、ここでは触れません。

 調査嘱託とは、手元にある資料に基づいて容易に調査することができる客観的事項について、公正さを有すると考えられる者に対して裁判所が調査を委託して、その調査報告を証拠資料とする簡易・迅速な証拠調べです。

 次に、警察・検察庁からの照会としては、捜査関係事項照会(刑事訴訟法197条2項)があります。これは令状を必要とする強制捜査ではなく、任意捜査として認められているものです。

 また、弁護士会からの照会としては、弁護士法23条の2に基づく照会(いわゆる23条照会)があります。

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by motomame | 2015-10-01 09:00