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by 弁護士 赤井勝治

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 ここまで、手術承諾書の効力について述べてきました。

 以前にリスクマネジメントについて述べた際の話と重複しますが、ここで再度、患者さんなどへの説明の書面化についても触れておきます。

 患者さんなどに説明をした際に、説明をした対象者から説明を受けた旨の確認書(通常は、説明内容の記載された書面と一体になっていることが多いものと思われます)に署名・押印してもらっておくことが考えられます。

  医師が患者さんなどに対し、きちんとした説明をしたか否かという点が問題となる紛争は、かなりの数にのぼります。

 したがって、面倒くさがらずに、何か説明をした場合には、できる限り説明を受けた旨の確認書を取っておくべきです。

 最も適切なのは、説明内容の記載された書面の下部に、「以上に記載された内容の説明を○○医師から確かに受けました」との文言を入れ、その下に説明をした対象者から、日付の記載と署名・押印をしてもらっておくことです。

 ただ、全てについて、このような対応をすることは現実問題として無理でしょうから、せめて重要事項についてだけでも、このような形式の確認書を取っておきたいものです。
 重要事項以外については、もう少し簡略なものでも構いませんが、それでもできる限り確認書を取っておかれることをお勧めいたします。

 さらに、重要な書類を交付した場合には、その受領書も作成して、署名・押印をしてもらっておくべきです。
 渡したはずの書面をもらっていないと言われることは案外多く、この場合、いくら渡した書面の控えを取っていても、それだけでは渡したことの証明にはなりません。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2015-09-24 09:00
 今回は、手術承諾書の効力のうち、②の、これから行う手術の内容やリスクなどが記載され、それらについて承諾する内容のものについてです。

 この②については、要するに、医師ないしは医療機関に要求される説明義務を尽くしたことを証明するためのものです。

 では、かかる手術承諾書を取っていれば、医師ないしは医療機関は、説明義務を尽くしたことになるでしょうか。

 この点、口頭での説明しか行わない場合と比べれば、そのような説明を行ったことの証拠の一つにはなり得ますので、かかる手術承諾書を活用することは望ましいものと考えられます。

 しかし、単にかかる手術承諾書を示して、これに署名をもらっただけでは、説明義務を尽くしたとは認められないでしょう。

 手術の内容やリスクなどについては、患者さんがこれらを理解した上で納得していなければ、説明義務を尽くしたことにはなりません。
 したがって、単にかかる手術承諾書を示して署名をもらうだけでは足りず、実際に手術の内容やリスクなどについての説明が行われ、患者さんが理解した上で説得するに足りるやり取りがあったと認められて初めて、説明義務を尽くしたことになります。

 そして、これらの実際の説明や患者さんとのやり取りについては、カルテに記載するなど、書面化しておく必要があると考えられます。

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by motomame | 2015-09-17 09:00
 今回は、手術承諾書の効力のうち、①の、これから行う手術の結果に対して、一切の異議を述べないことを承諾する内容のものについてです。

 この①については、要するに手術の結果に対する一切の責任を免除する旨の承諾を求めるものです。

 このような手術承諾書を差し入れさせている場合、医師や医療機関は、手術の結果(問題になるのは、障害が残ったり、死亡に至った場合などが多いものと考えられます)についての一切の責任を免れることができるのでしょうか。

 医師や医療機関は、患者さんとの診療契約に基づき、適切な医療を行う義務を負っており、これに違反して患者さんに損害を発生させた場合には、損害賠償責任を負います。
 また、医師や医療機関は、当然に、患者さんに対して故意又は過失により損害を与えてはならず、これに違反した場合には、患者さんに対して、損害賠償責任を負います。

 結論から言えば、上記手術承諾書には、このような医師や医療機関の損害賠償責任を免除する効力(これを患者さんの側から見れば、損害賠償請求権を放棄する効力)は認められません。
 すなわち、上記手術承諾書は、医師や医療機関に適切な医療を行う義務の違反が認められず、また故意又は過失により損害を与えたとは認められないような場合については、異議を述べないという趣旨のものにすぎないものと解されます。

 この点、裁判例でも、病気には医師の最善の努力にも拘らず不測の事態の生ずることのあることを認め、そのような際苦情を言わないという趣旨のものであると解するのが相当である(大阪地裁昭和37年9月14日判決)、単なる「例文」の類と認めるのが相当である(静岡地裁昭和37年12月26日判決)などとされています。

 そして、仮に、医師や医療機関の損害賠償責任を免除する効力までを含ませようとしていたとすれば、公序良俗に違反して無効(上記大阪地裁判決)、あるいは衡平の原則に反する(東京高裁昭和42年7月11日判決、上記静岡地裁判決の控訴審)とされています。

 裁判所がこのような判断をしたこともあって、近時は、①のものは、あまり見かけないようになったと考えられます。

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by motomame | 2015-09-10 09:00
 多くの医療機関では、手術をするにあたっては、その前に、患者さんん本人ないしはそのご家族から手術承諾書を取っています。

 今回は、この手術承諾書の効力について述べてみたいと思います。

 同じく手術承諾書と言っても、その様式は医療機関によって様々であり、大きく分けると、

① これから行う手術の結果に対して、一切の異議を述べないことを承諾する内容のものと、

② これから行う手術の内容やリスクなどが記載され、それらについて承諾する内容のもの

とが見られます。

  従来は、①のものも多く見られましたが、現在では、②のものが大多数を占めるものと考えられます。

  それでは、それぞれの効力はどのように考えられるのでしょうか。

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by motomame | 2015-09-03 09:00