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by 弁護士 赤井勝治

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 前回は、医療機関の事業承継の具体的な手立として、遺言書の作成について述べました。

 この遺言書の作成よりも、より確実に、事業用財産や医療法人の出資持分を二男に単独で取得させる方法としては、二男に対する生前贈与が考えられます。
 確定的に二男が事業用財産や医療法人の出資持分を単独取得できるうえ、早期に経営の引き継ぎができるなどのメリットがある反面、父親が生前から事業用財産や医療法人の出資持分を失ってしまうことになる点がネックです。

 また、単純に贈与して贈与税を支払うとなると、贈与税がかなり高額となるため、相続時精算課税制度を利用する必要があります。

 この相続時精算課税制度とは、贈与時に贈与財産に対する贈与税(特別控除額である2,500万円を超える部分についての20%相当額)を納め、その贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めたその贈与税相当額を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税を行うものです。簡単に説明すれば、この制度を利用すれば、最終的には贈与税率ではなく、これよりも低い相続税率で相続時に精算されるというものです。
 利用する場合のメリット・デメリットはありますが、支払う税額は単純に贈与して贈与税を支払う(これを暦年贈与といいます)場合と比べて、通常は低額ですみます。

 生前贈与を利用する場合には、このように相続時精算課税制度の利用が必要となりますが、遺言の場合と同様に、二男以外の相続人の遺留分を侵害しないようにする必要もあります。
 というのも、遺留分侵害の有無を判断するにあたっては、法定相続人に対する生前贈与分も原則として遺産に加算して計算することになるからです。

 したがって、ここでも、遺言や遺産分割によって、二男以外の母親や長男に対し、事業用財産や医療法人の出資持分以外の財産で、それぞれの法定相続分の2分の1以上に相当するものを相続させるようにする必要があります。

 さらに、ここでも、二男の相続税納税資金の手当てもしておく必要があります。

 結局のところ、事業承継の対策として、遺言書の作成と生前贈与のいずれが最適かについては、現経営者の意思や財産構成等によって異なるため、事案ごとに判断せざるを得ません。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属) 
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by motomame | 2015-06-25 09:00
 今回は、医療機関の事業承継の具体的な手立てからです。

 まず、一般的には、遺言書の作成が考えられます。

 すなわち、父親が、事業用財産や医療法人の出資持分を二男に単独で全て相続させる旨の遺言書を作成しておくのです。

 遺言書には、自筆証書遺言(遺言者が作成のルールに従って自筆で作成するもの)、公正証書遺言(公証役場に行って公証人に作成してもらうもの)、秘密証書遺言(遺言内容を誰にも知られたくない場合に作成のルールに従って遺言者が作成し、公証役場で封紙をしてもらうもの)があります。それぞれにメリットとデメリットがありますが、確実性という観点からは、公正証書遺言にされることをお勧めします。

 この場合に、配慮しなければならないのが、二男以外の相続人の遺留分を侵害しないようにすることです。この遺留分とは、遺言によっても奪うことのできない法定相続人の遺産に対する権利(取り分)であり、兄弟姉妹以外の相続人には、法定相続分の2分の1が認められています。

 この遺留分が侵害されている場合、要するに遺言によって法定相続分の2分の1を取得できなくなった場合、侵害された相続人は、この法定相続分の2分の1を取得させるよう請求することができます(これを遺留分減殺請求と呼びます)。

 せっかく事業用財産や医療法人の出資持分を二男が単独で全て取得できるよう遺言書を作成しても、この遺留分減殺請求がなされると、遺言内容を実現できないおそれがあります。

 したがって、遺言により二男以外の母親や長男に対し、事業用財産や医療法人の出資持分以外の財産(自宅など医院以外の不動産や現預金、有価証券等)で、それぞれの法定相続分の2分の1以上に相当するものを相続させるようにしておかなければなりません。
 
 また、二男の相続税納税資金の手当てもしておく必要があります。というのも、二男に事業用財産や医療法人の出資持分を集中させるとともに、母親や長男の遺留分に配慮すると、結果的に現預金のほとんどは母親や長男が相続することとなり、二男が相続税を支払えなくなるおそれが生じるからです。特に、医療法人の出資持分は、いざ評価してみると、かなりの高額に及ぶことが少なくありませんので、そのおそれは大です。
 その手当としては、父親が二男を受取人とする生命保険に加入しておくことなどが考えられます。

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by motomame | 2015-06-18 09:00
 前回は、医療機関の事業承継の対策として、事前に何らかの手立てをしておく必要があるというところまでお話ししました。

 後継者である二男が、医療機関の事業を承継するためには、父親が所有する事業用財産(たとえば医院の土地建物や設備などがこれにあたります)がある場合には、これを二男が単独で相続するのが望ましいと考えられます。
 また、医療法人の場合には、父親の有する出資持分(単純化するために、ここではその100パーセントを父親が有しているものとします)も、二男に集中させる必要があります。

 二男が医療機関の経営を引き継ぐためだけであれば、必ずしも二男が単独で全てを取得する必要まではないのかもしれません(たとえば医院の土地建物等が共有になったとしても、そのまま医院として使用できるのであれば、また、出資持分が分散した場合でも、医療法人の経営に支障がなければ、最低限の要請は充たします)。

 しかし、事業承継は、単に経営が後継者に引き継がれただけでは完結せず、後継者が引き継いだ事業を存続・発展させてはじめて完結するものと考えられます。その観点からは、安定した医療機関の経営継続が不可欠であって、事業用財産や医療法人の出資持分は、極力、二男が単独で全てを取得すべきです。

 では、そのためには、どのような手立てを講じておくべきでしょうか。

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by motomame | 2015-06-11 09:00
 医療機関の事業承継においても、他事業の事業承継の場合と同様、①親族内での承継、②親族以外への承継、③M&Aが考えられますが、ここでは最も多いと思われる①の親族内での承継について述べたいと思います。

 医療機関の中には、法人化されているものと、法人化されず個人のままで経営されているものとがあります。
 医療法人の場合には、個人経営のケースに加えて、医療法人への出資持分の扱いを考える必要があります。

 以下では、医療機関を経営している医師である父親が、子供にこれを承継させるケースを考えてみることにします。

  家族構成としては、夫婦と長男、二男の4人家族で、二男のみが医師資格を有しており、家族内では、この二男を後継者とすることが既に決まっているものとします。

 事前に何の手立てもしないまま、父親が亡くなってしまうと、相続人である母親と2人の子供の3人の間で遺産分割を行うことになります(法定相続分は、母親が2分の1、子供らがそれぞれ4分の1となります)。

 相続人間にしっかりとしたコンセンサスがあって、二男が医療機関の事業を承継できるよう、遺産分割が円滑に進めば問題はありませんが、こればかりはその時になってみなければ、どうなるのか分かりません。事前にコンセンサスがあったはずなのに、いざ相続が開始すると揉めてしまうということも少なくはありません。

 そこで、事前に何らかの手立てをしておく必要があり、これが事業承継の対策ということになります。

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by motomame | 2015-06-04 09:00