医師・医療従事者・医療機関の方々に対する法律事務所からの情報発信です。赤井・岡田法律事務所HP: http://www.akai-okadalaw.com


by 弁護士 赤井勝治

<   2015年 01月 ( 4 )   > この月の画像一覧

 前回に引き続き、医療事故調査制度の概要を紹介いたします。

 今回は、前回より、もう少し詳しく見ていくことにします。

 まず、対象となる医療事故については、当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し又は起因すると疑われる死亡又は死産であって、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかったものとされています。
 このように、対象となる医療事故は、全ての医療事故ではなく、医療機関の管理者が予期しなかった患者の死亡又は死産事故に限定されています。

 これに対し、対象となる医療機関については、病院、診療所又は助産所とされており、特に限定はされていないので、全ての医療機関が対象となります。
 よって、医師が一人しかいないような診療所であっても対象となります。
 このような診療所であっても、他の医療機関と同様に、内部調査を行わなければなりません。その際には、他の医療機関と同様に、外部の支援団体(医学医術に関する学術団体その他の厚生労働大臣が定める団体)に必要な支援を求めて行うものとされています。

 そして、厚生労働大臣から指定を受けた一般社団法人又は一般財団法人(いずれも医療事故調査を行うこと等により医療の安全の確保に資することを目的とするもの)が、その申請により、医療事故調査・支援センターの任を担うことになります。
 この医療事故調査・支援センターは、病院等の管理者から報告を受けて、情報の整理及び分析を行ったり、病院等の管理者又は遺族からの依頼を受けて調査を行うなど医療事故調査制度における重要な役割を担うほか、医療事故の再発防止に関する普及活動を行い、医療の安全の確保を図るために必要な業務を行うとされています。

 法律上、医療事故調査・支援センターから警察に直接通報する旨の規定はおかれておらず、この点、厚生労働省も、制度の目的は医療事故の原因究明と再発防止にあるので、医療事故調査・支援センターから、警察に直接通報はしないとしています。
 ただし、医療事故調査・支援センターの調査報告書等を医療機関等に対する責任追及や訴訟に使用できない旨の規定も置かれていないため、遺族が、調査報告書等を刑事や民事の責任追及の資料として使うおそれがあります。
 この点は問題であり、いくら制度の目的が医療事故の原因究明と再発防止にあるとはいえ、法律上調査報告書等を医療機関等に対する責任追及や訴訟に使用できない旨明記されない限りは、結果的に、調査報告書等が刑事や民事の責任追及の資料として使われるのではないかということが危惧されます。

 また、費用負担の問題もあります。
 まず、内部調査の費用については、明記はされていませんが当該医療機関が負担することになるものと考えられています。
 次に、医療事故調査・支援センターへ調査を依頼した場合の費用負担についても明記されていないため、誰が負担するのかが問題となります。この点、厚生労働省は、医療事故調査・支援センターの行う調査の費用は、45万円~90万円になり、そのうちの5,000円~5万円程度を遺族側に負担してもらうことを想定しているようです。
 その残額が全て、医療機関側の負担ということになれば、医療機関にとって酷な結果になると思われます。

 なお、これらの医療事故調査制度に関する改正規定は、平成27年10月1日から施行されます。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
[PR]
by motomame | 2015-01-29 09:00
 地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(医療・介護総合確保法)が、本年(平成26年)6月18日に成立しました。
 その第4条で、医療法の一部を改正するとされ、この改正により医療事故調査制度が創設されましたので、今回は、その概要を紹介いたします。

 まず、病院、診療所又は助産所の管理者は、医療事故(当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であって、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかったものとして厚生労働省令で定めるものをいう。)が発生した場合には、遅滞なく、当該医療事故の日時、場所及び状況その他厚生労働省令で定める事項を医療事故調査・支援センターに報告しなければならないとされています。

 また、病院等の管理者は、医療事故が発生した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、速やかにその原因を明らかにするために必要な調査を行い、調査を終了したときは、遅滞なく、その結果を医療事故調査・支援センターに報告しなければならないとされています。

 そして、医療事故調査・支援センターは、病院等の管理者からの上記報告により収集した情報の整理及び分析を行い、病院等の管理者又は遺族からの依頼があれば必要な調査を行って原因を究明し、その結果を病院等の管理者や遺族に報告するなどして、医療事故の再発の防止につなげるものとされています。

 以上をまとめると、医療事故が発生した場合、医療機関は、医療事故調査・支援センターに報告をするとともに、内部調査を行い、その結果についても医療事故調査・支援センターに報告するものとされています。そして、報告を受けた医療事故調査・支援センターは、内部調査結果を分析するとともに、依頼があれば自らも調査をして原因を究明し、医療事故の再発の防止につなげるものとされています。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
[PR]
by motomame | 2015-01-22 09:00
 このテーマについての最終回です。

 これまで述べてきたように、裁判所は、従来指摘されていた鑑定をめぐる問題点を解消するために、さまざまな工夫をしているほか、「アンケート鑑定」や「カンファレンス鑑定」と呼ばれる新しい試みもなされるようになってきています。

 関西では大阪地方裁判所における医療訴訟で、これらが導入されています。

 アンケート鑑定とは、複数の鑑定人に、アンケート形式の鑑定事項に対する回答を求め、その回答書を鑑定意見とする鑑定方法をいいます。
 このアンケート鑑定は、健康診断における画像読影が問題となっている場合のような短時間のうちに極めて多くの画像読影をしなければならない事案などに、有効な鑑定方法であるといわれています。

 カンファレンス鑑定とは、医療現場で実際に行われているカンファレンスにヒントを得て発案されたものであり、複数の鑑定人が、問題点について議論し、その議論の過程や結論を鑑定意見とする鑑定方法をいいます。
 このカンファレンス鑑定は、いまだ治療方法が確立していない最先端の分野など、個々の医師によって評価が分かれそうな問題をはらんでいる場合に有効な鑑定方法であるといわれています。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
 
[PR]
by motomame | 2015-01-15 09:00
 前回までに、裁判所が円滑に鑑定人を選任しようとするのであれば、少なくともネガティブな3つの要素は、これを排除する必要があり、その一つ目の要素についてまでを述べてきました。その続きです。

 ②(法廷で人格攻撃などの質問をされ、不快な思いをした経験がある)については、
(ア)事前に裁判所と訴訟当事者(その双方の代理人弁護士)との間で、提出された鑑定書の内容について協議し、鑑定人に対する質問項目を絞らせることにより、鑑定事項とは関係のない質問を排除すること
(イ)法廷で行われる鑑定人の証人尋問は行わず、これに代えて、補充鑑定書の提出や書面による尋問に対する回答書の提出を求めたり、裁判所が主導的に鑑定人に対する(補充)質問を行うようにすること
(ウ)法廷で鑑定人の証人尋問を行う場合であっても、通常の法廷ではなく、ラウンドテーブル法廷(裁判官や当事者、代理人弁護士が丸いテーブルを囲むように着席して手続を行う法廷)等、裁判所における和やかな雰囲気の場所を利用すること
(エ)法廷ではなく、鑑定人の就業先である病院に赴いて、鑑定人に対する補充質問を実施する
などのさまざまな工夫がなされています。

 ③(何をどのように鑑定すればいいのかが分かりにくい)については、裁判所が、鑑定人(候補者)に対して、鑑定の手続を分かりやすく説明したCD-ROMやパンフレットのほか、当該事件の概要等を分かりやすく説明した資料を交付することで、鑑定手続自体に対する理解を得る努力がなされています。

 また、そもそも、鑑定人が「何をどう鑑定すればいいのかが分かりにくい」といった不満をあげているのは、裁判所主導の争点整理が不十分なまま、いわゆる丸投げに近い形で鑑定人に鑑定が託されてしまうため、鑑定人にとって、何が争点で、何を鑑定すればいいのか分からないまま鑑定が行われてしまうという機能不全に陥っているからではないかとの指摘があります。

 そこで、こういった指摘を受けて、裁判所にも、争点整理を徹底し、鑑定人の意見も聴きながら、鑑定事項を絞り込むことが重要であるとの認識が広まってきています。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
 
[PR]
by motomame | 2015-01-08 09:00