医師・医療従事者・医療機関の方々に対する法律事務所からの情報発信です。赤井・岡田法律事務所HP: http://www.akai-okadalaw.com


by 弁護士 赤井勝治

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 医療紛争の裁判外での解決手段としてADRという制度があるということや、東京弁護士会が開設した医療ADRで実際に取り扱われた具体的な一事例を以前ご紹介させていただきました。

 医療事故が発生し、医療機関側からあるいは患者側からその紛争の解決を依頼された弁護士としては、その解決までに数年がかかってしまうかもしれない裁判(訴訟)までする必要はないけれども、当事者同士の話し合いでは解決が困難であると判断した場合などには、短期に、かつ、比較的安価に解決を図るために、医療ADRの利用を選択することが考えられます。

 患者側が、各地の弁護士会にある紛争解決センターなどが運営する医療ADRに和解あっせんの申立てをすると、相手方となる医療機関側は、当該ADR機関から、応諾(当該申立てを引き受け、和解あっせん手続きに応じること)するか否かの回答を求められます。
 民事調停と同様、相手方はその申立てに応じなければならない義務があるわけではありませんので、応諾するか否かは相手方となる医療機関側が自由に決めることができます。
 そうはいっても、患者側からの和解あっせんの申立てに対して不応諾という回答をした場合、後日、裁判となった場合に、患者側から、医療機関側は「話し合いによる解決に誠実に応じようとしなかった。」などと主張される場合もありますので、それなりの理由に基づいて応諾しないという回答をした方がよいと考えられます。

 実際に和解あっせんの申立てを受けた医療機関側はどのような対応をしているのでしょうか。
  この点に関して、日本病院団体協議会が平成21年度に実施した「医療裁判外紛争解決(ADR)機関」に関するアンケートの調査結果が参考になりますので、ご紹介させていただきます。

 アンケートの調査協力病院は、国立大学附属病院長会議、独立行政法人国立病院機構、全国公私病院連盟、全国自治体病院協議会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本私立医科大学協会、日本精神科病院協会、日本病院会、日本慢性期医療協会、独立行政法人労働者健康福祉機構であり、その11の団体に所属する病院1001に対してアンケート調査を行い、その結果回答を得られたのは400の病院でした。

 患者側からADR機関へ申立てがなされ、応諾するか否かの問合せを受けたことがあるのは、全体400病院のうち20病院(5%)であり、件数でいうと24件でした。
 24件の問合せに対して、和解あっせんに応じるとの回答をしたのは13件、半数以上の病院が応諾しています。
 ADRでは、医療機関側の応諾率が低いということがよく言われるのですが、この結果からすると、それほどでもないという印象を受けます。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2014-07-31 09:00
 前回は、診療報酬債権の時効管理についてまでをお話ししました。

 今回は、実際の回収についてです。

 それでは、実際の回収はどのようにして行うことになるのでしょうか。

 まずは、口頭や書面での請求を何度か行います。

 それでも、患者さんが支払わない場合には、配達証明付内容証明郵便での請求を行います。
 このとき、請求書面には、請求の日、元々の支払期限、請求金額、その内訳、請求の相手方、請求者等を明記するとともに、「この書面到達後1週間以内にお支払い下さい」というように改めて最終の支払期限を設定するとともに、「その期間内にお支払いいただけない場合には、誠に遺憾ではありますが、法的手続を取らせていただきます」といった最後通告をしておきます。

 内容証明郵便というものに慣れていない患者さんの場合には、これだけで支払ってくるなり、何らかの連絡をしてくることがあります。
 連絡があれば、最低でも、患者さんに対して、前記の時効中断のための措置(一部支払いをしてもらったり、支払いを猶予して欲しいという書面を書いてもらったり、分割払いの約束を書面でしてもらう)を取っておきます。

 そして、このように内容証明郵便を送付しても、支払ってこない、また何の連絡もしてこないといった場合には、速やかに法的手続を取るべきです。

 法的手続としては、支払督促という制度の利用がお勧めです。
 これは、金銭債務の請求について、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に対して、支払督促の申立を行うもので、相手方から異議の申立がなければ、確定判決の同一の効力を得ることができます。
 これは裁判所を介する手続でありながら、定型的で簡便であり、必ずしも弁護士をつけなくても行うことができます。
 近時、滞納給食費の回収などにも利用されて効果を上げているようです。

 ただし、この支払督促は、相手方が異議を申し立てると通常の訴訟に移行してしまうのが弱点です。
 そこで、初めから、訴訟を提起するという方法もあります。
 訴訟のうち、請求額が60万円以下の場合には、少額訴訟という通常の訴訟と比べて、定型的で簡便な手続を利用することもできます。

 通常の訴訟を提起する場合でも、診療報酬の請求であれば、それほど作成する書面や用意すべき証拠も複雑ではありませんので、一度、弁護士に依頼して、その内容が分かれば、次からは必ずしも弁護士をつけなくても行うことが可能であると考えられます。

 支払督促や裁判は、これによって患者さんの財産に対して強制執行をするための手続ではありますが、これらの手続を取ることによって、患者さんが任意に支払いをしてくることが少なくありません。
 また、裁判の場合には、和解という形で話し合いがまとまることも少なくありません。

 未回収の診療報酬が医院経営を圧迫する前に、その対策を一度弁護士に相談してみられてはいかがでしょうか。

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2014-07-24 09:00
 前回の続きです。

 確実な診療報酬の回収のためにも、時効管理を適切に行う必要があります。

 最も有効な時効管理は、3年の時効期間が経過する前に、速やかに回収のための法的手続などを取ってしまうことです。

 これが難しい場合には、別途、時効中断のための措置を取っておく必要があります。

 時効中断とは、それまでの期間の経過をいったんご破算にしてしまう制度です。
 時効期間は、請求ができるとき(診療報酬では、通常個々の診療終了後になります)から進行していきますが、中断すると、中断までの期間経過はカウントされなくなり、この中断後に新たにカウントが始まることになります。

 この時効中断のための措置としては、後述する回収のための法的手続である支払督促や裁判のほか、債務の「承認」があります。

 「承認」とは、ここでは患者さんが診療報酬の支払義務があることを自ら認めることです。
 これについては、きちんと書面化しておく必要があります。
 よく使われるのは、支払いを猶予して欲しいという書面を書いてもらったり、分割払いの約束を書面でしてもらうことです。
 いずれも、その前提として、患者さん自身が診療報酬の支払義務があることを認めていることになります。

 それ以外にも、診療報酬の一部を支払ってもらうことも「承認」にあたる場合があります。
 ただ、この場合には、未払分の診療報酬全体の一部の支払いであることを明示して支払ってもらう必要があります。
 そうでないと、全額を支払ったつもりで残債務はないと思ったとの言い訳をされてしまうおそれがあり、その言い訳が認められると、「承認」にはあたらなくなってしまいます。

 このように、未払の診療報酬については、消滅時効期間も考慮したうえでの適切な管理が、回収に先だって重要となります。

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by motomame | 2014-07-17 09:00
 患者さんの医療機関に対する一部負担金の未払は今や社会問題化しています。

 一部負担金については、国民健康保険や健康保険において、保険者と被保険者との関係(公法上の債権債務関係)であるという側面がありますが、その窓口払いについては、医療機関と患者さんとの間の債権債務関係であると解されています。
 誤解を怖れずに単純化して言えば、医療機関は、患者さんに対して、一部負担金を診療の対価として請求することができるということです。
 以下、この一部負担金も含め、窓口で支払われる診療の対価等を単に診療報酬と呼ぶことにします。

 診療報酬を請求する相手方は、通常、診療契約の当事者である患者さん本人です。
 このほか、診療報酬について、医療機関が(連帯)保証人との間で、(連帯)保証契約を締結していれば、その(連帯)保証人も請求の相手方になります。

  (連帯)保証人をつけなければ診療をしないとすることは問題ですが、診療報酬の確実な回収のためには、患者さんや(連帯)保証人が任意に応じるのであれば、(連帯)保証人をつけてもらうことが望ましいと言えます。

 請求の方法としては、通常は、口頭や書面(請求書の発送)での請求が行われています。
 しかし、このような請求を繰り返し行っても、患者さんが一向に支払わない場合にはどうすればよいのでしょうか。

 そのまま放置しておくと、診療報酬債権は消滅時効により請求できなくなってしまうおそれがあります。

 それではここで、先に、消滅時効のお話しをしておきましょう。
 消滅時効というのは、一定期間の経過によって債権が消滅してしまう民事上の制度です。ただ、単に一定の期間が経過すれば、自動的に債権が消滅してしまうわけではなく、法律で定められた一定期間が経過した後に、債務者が消滅時効という制度を使うという意思を表示(これを援用と言います)してはじめて債権が消滅します。

 診療報酬については、民法170条で、消滅時効期間は3年と定められています。これは通常の債権の消滅時効期間が10年とされているのと比べて、その期間が短く、短期消滅時効と呼ばれています。
 このように診療報酬については、3年という短期消滅時効期間が定められているため、きちんとした管理(これを「時効管理」といいます)をしておかないと、すぐに消滅時効により請求ができなくなってしまうおそれがあります。なお、公立病院における診療報酬についても、この時効期間は同じ3年です(最高裁判所平成17年11月21日判決)。

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by motomame | 2014-07-10 09:00
 前回に引き続き、証拠保全についてのお話しです。

 証拠保全手続は、証拠保全申立書を作成して裁判所に申立をするところからはじまります。
 そして、裁判所が証拠保全の決定を出した後、実際に裁判官と患者側代理人弁護士が医療機関に出向き、裁判所は、当該医療事故に関して、どのような診療記録があるのか、その有無・内容を確認し、証拠保全調書を作ります。
 その際、確認された診療記録は謄写(コピー)され調書に添付されます。
 患者側代理人弁護士は、後日、裁判所に対して、その証拠保全調書の謄写請求をして、必要な診療記録を入手することになります。

 一般に、証拠保全手続は、ある日突然、裁判所の執行官が当該医療機関を訪れ、「証拠保全決定書」を医療機関に送達し、当該決定書に記載されている検証時刻(送達から1~2時間経過した後とされることが多いようです)に、裁判官、裁判所書記官、患者側代理人弁護士がやってきて、裁判官から当該患者に関する診療記録一切の開示を求められるというものです。

 それでは、こうした証拠保全決定書が送達されてきた場合、医療機関としてはどのように対応すればよいでしょうか。

 証拠保全手続は、医療機関側に対して診療記録の開示に「協力」することが求められるのであって、医療機関側がこれを拒否しても過料が課されるなどするわけではありません。
 しかし、証拠保全手続で開示を拒否した診療記録が、後日、訴訟等で医療機関側の証拠として提出された場合には、改ざんされたのではないかとあらぬ疑いをかけられるなど、不利な取扱いを受けるおそれがあります。
 証拠保全手続の際に開示がなされていれば、後日、改ざんの有無について争われることがなくなりますので、その意味では、誠実に対応・協力することが肝要であるといえるでしょう。

 このように、証拠保全決定書に記載のある診療記録はすべて開示することが前提といえますが、決定書に記載のない診療記録(換言すれば、開示への協力が求められていない診療記録)まで開示する必要はありません。
 実際には、保全手続の最中に、そうした診療記録がたまたま発見された場合、患者側代理人弁護士から検証(提示・謄写して調書に添付)を求められることがありますが、医療機関側としてはこれを拒否することができます。
 ただし、拒否すれば、後日、再度証拠保全の申立てが行われるであろうと医療機関側が判断し、これに応じる場合もあります。

 なお、医療機関によっては、決定書に記載のあるなしにかかわらず、患者側代理人弁護士からの積極的な要求があるか否かにかかわらず、当該医療事故に関連すると思われる診療記録すべてを開示するという方針をとっているところもあります。

 前述のとおり、証拠保全手続は、ある日突然数時間前に実施されると告知される手続ですので、医療機関にとっては裁判官や患者側代理人弁護士の要請に応えるだけでも精一杯という状況に陥りがちです。
 しかし、証拠保全手続が後日の訴訟提起を見据えて行われ、保全手続の時点での医療機関側の対応が訴訟手続に影響を与えかねないものであることからすると、開示すべき診療記録の範囲はどこまでなのかという判断をしなければならない場合、あるいは、現場で判断を求められた場合などのために、医療機関側も証拠保全手続に代理人弁護士を立ち会わせることがベストの対応といえるでしょう。

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by motomame | 2014-07-03 09:00