医師・医療従事者・医療機関の方々に対する法律事務所からの情報発信です。赤井・岡田法律事務所HP: http://www.akai-okadalaw.com


by 弁護士 赤井勝治

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 医療事故が発生し、患者さん本人あるいはそのご家族の方などが弁護士に相談された場合、相談を受けた弁護士が、①治療行為にミスがあったか否か、②ミスと結果(死亡や後遺症)との間に因果関係があるといえるか否か、③ミスの内容と結果から、法律や過去の裁判例を検討したうえで、損害賠償請求が可能か否か、④損害賠償請求が可能であるとしてその金額はどの程度になるかなどの「見通し」を立てるためには、カルテ等の診療記録を入手し、検討することが不可欠となります。

 診療記録の入手については、従来は、証拠保全手続の方法によるというのが大半を占めていました。
 従前、診療記録は紙媒体であることが多かったため、改ざんのおそれがあり、患者側の弁護士としては、それを未然に防ぐため(あるいは、すでにされてしまった改ざんを早期に発見できるようにするため)、裁判所に申立をして、カルテ等をおさえて(保全して)もらう必要があったからです。

 もっとも、電子カルテの導入により、診療記録が改ざんされる危険性が低下し、また、患者さん本人やご家族からの請求があれば、カルテ等を開示する医療機関が増えてきました。
 このような状況の変化から、最近では、時間や費用を節約するために、ご本人やご家族にお願いして、診療記録の開示を直接請求していただくことも少なくありません。

 しかし、当該医療機関が紙媒体で診療記録を保存している場合には、患者側弁護士としてはカルテ等の改ざんを懸念しなければなりません。
 また、電子カルテを導入している医療機関が相手方となる場合であっても、当該医療機関が診療記録の全部あるいは一部の開示を拒否することもあります。
 さらに、「カルテ等の診療記録」といっても多種多様なものがあるため、直接請求していただくとしても、弁護士が「検討」するのに必要な診療記録をもれなく開示してもらうということは難しく、弁護士が実際に現場で診療記録を見ながら開示(コピー)の要否を判断しなければならない場合もあります。医療機関が一部の診療記録を隠匿する場合もないわけではありません。

 このように、カルテ等の必要な診療記録が任意に提出されないなどの場合に、患者側代理人弁護士は裁判所に対して証拠保全手続の申立を行い、裁判所から医療機関に出向いてカルテなどの診療記録を保全してもらうことになります。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2014-06-26 09:00
 前回は、地震による災害によって、医療機関が抱える可能性のある法的問題のうち、①建物などの倒壊・損傷によって患者さんに被害が発生した場合の問題について述べました。
 今回は、②以降についてです。

 停電や断水によって医療機器が使えなくなくなり、患者さんに症状悪化や死亡という損害が出た場合、どう考えればよいでしょうか。

 医療機関としては、患者さんとの間で診療契約を締結しておりますので、一定の水準以上の診療を提供する義務があり、それができなければ債務不履行として、損害賠償責任を負うことになります。

 ある医療機器について、停電や断水時にそれをバックアップする非常用電源や非常用水源などを兼ね備えていることが、同じ規模の医療機関において一般的であるといえるにもかかわらず、非常用電源・水源を兼ね備えていなかった場合には、問題となります。
 その場合、医療機器が、電源や水源がなくなって稼働しなくなり、現に治療中の患者さんの容態が悪化したり、死亡した場合には債務不履行による損害賠償責任を負うことになります。
 また、バックアップする機能がついているにもかかわらず、それを活用しなかった場合にも同様の責任を問われることがあり得ます。
 したがって、医療機関としては、停電時や断水時の医療機器の稼働を維持するためにはどうすればよいのかについて普段から検討を怠らないようにすべきでしょう。

 最後に、大規模災害により診療が継続できなくなった場合です。

 医療機関としては、診療が継続したくても、地震などにより設備が損壊したり、スタッフを確保できなくなって、診療継続が困難となったとき、患者さんの診療をお断りすることが、法的には問題はないかということです。

 医師法19条には、「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と規定されていますが、大規模災害によって診療継続ができない場合は、この正当な事由に当たると考えられるので、診療を拒んでも医師法違反にはならないと考えられます。

 大規模災害はいつ起こるか分かりませんが、ある程度の備えをすることによって被害を軽減することはできるものです。
 普段からどのように防災の備えをしておくのかについて、この機会に一度お考えいただければと思います。 

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2014-06-19 09:00
 大規模災害において医療機関が抱えるであろう法的な問題について、考察してみたいと思います。

 地震による災害によって、医療機関が抱える可能性のある法的問題は、大きく分けて3つあると考えられます。
 まずは、①建物などの倒壊・損傷によって患者さんに被害が発生した場合の問題、次に、②大規模災害を原因とする停電や断水によって医療機器が突然使用できなくなり、患者さんに被害が発生した場合の問題、そして、③最後に大規模災害により診療を継続できなくなった場合の問題です。
 他にも、様々な問題があると思われますが、今回はこの3つに絞って検討してみたいと思います。

 東日本大震災において、地震や津波による建物の倒壊によって、多数の人命が失われたことはマスメディアで多数報道されているところです。
 この震災の規模や発生原因については、現在専門家によって分析されており、その分析結果を待たなければならなりませんが、一般的に地震の災害について、まず考えなければならないのは建物の倒壊によって生じる人的被害の問題です。

 建物の所有者もしくは占有者(賃貸されている場合の賃借人)がまず考えなければいけない責任は、土地工作物責任という責任です(民法717条)。これは、土地上に存在する建物等の工作物に瑕疵(欠陥)があり、それを原因として他人に損害を与えた場合は、所有者(占有者がいる場合は占有者)が損害賠償責任を負うべきとするものです。
 具体的にいえば、診療所の建物に欠陥があって、それが原因で建物が倒壊・損傷し、地震当時に診療所にいた患者さんが死亡・負傷した場合には、診療所を開設している医師が損害賠償責任を負わなければならないということです。
安全な建物をどのように建てるべきなのか、そのためにはどのような基準を守るべきなのかについては、建築基準法という法律に規定があります。したがって、原則として建築基準法に適合する設計で診療所を建設している場合には、瑕疵(欠陥)がないということがいえるので、上記の損害賠償責任はありません。
 しかし、残念ながら平成に入ってからも、建築基準法に合致するという確認を得て建てられた建物でさえ、確かに設計図上は建築基準法に合致しているものの、現実に建築された建物自体は建築基準法の基準に合致しないというものが少なくありません。
 したがって、念のために建築を依頼した建築士さんに耐震性についての確認をしていただく方がよいかと思います。その上で、補強工事が必要ということであれば、補強工事を行うべきでしょう。
 なお、竣工当時は問題なかったとしても、経年変化によって建物に欠陥の発生することがあります。そして、欠陥が発生しているにもかかわらず、これを放置した場合は、責任を問われることになりますので、メンテナンスを怠らないことも肝要です。

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by motomame | 2014-06-12 09:00
 裁判例検討
  前回ご紹介した裁判例から、転医・転送義務の有無について検討すると、以下の要素を総合的に考慮して、転医・転送義務の有無が判断されていると考えられます。
① 患者の症状からみて、どのような疾患が考えられるか。
② その医師(医療機関)に期待される医療水準からみて、上記疾患の診断が可能か。
③ その医師(医療機関)が、その疾病を検査・治療する技術や施設を有しているか。
④ その検査法・治療法は当該患者に適応があるか。
⑤ 期待されている検査・治療が他の医療機関の医療水準となっているかどうか。
⑥ 現実に転送することが可能か(搬送できる状態か、転送先はあるかなど)。

 損害
 転医・転送義務による損害の範囲は、当該義務違反と結果との間に因果関係が認められるか否かによって判断されます。
 当然、結果との間に因果関係が認められなければ結果についての損害賠償は認められませんが、裁判例の中には、結果に対する因果関係が認められない場合にも、適切な診療を受ける機会が奪われたことによる慰謝料を認めたものもがあります。
 たとえば、神戸地裁姫路支部平成8年9月30日判決(判例時報1630号97頁)は、自転車運転中に転倒して頭部打撲等の負傷を負い、開頭手術を受けた患者が、脳ヘルニアにより死亡した事案で、当初患者を受け容れた病院が患者を転送する場合において、1箇所の収容見込みのない専門医療機関に連絡を取るのみで、他の専門医療機関には手続きをとらず、転医義務違反があったとされました。そして、医師の転医義務違反と死亡との因果関係は認められないとしたうえで、適切な転医措置により死期を遅らせ、適切な治療により症状を改善する機会と可能性を奪われたことに対する慰謝料として、患者本人に400万円、その妻及び子4人にそれぞれ100万円を認めました。

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by motomame | 2014-06-05 09:00