医師・医療従事者・医療機関の方々に対する法律事務所からの情報発信です。赤井・岡田法律事務所HP: http://www.akai-okadalaw.com


by 弁護士 赤井勝治

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今回は、治療方法や方針などの説明不足について、お話したいと思います。

1 説明義務について
 まず、医師には、患者さんに対して、治療方法、方針について説明する義務があります。
 医師は、患者さんとの間で診療を実施する際、法的には診療契約を締結することになります。診療契約によって、医師は、患者さんに診療義務が課せられ、患者さんは医師に対して診療報酬の支払義務が課せられます。さらに、医師には、診療義務が課されるだけではなく、治療内容や方針について、患者さんに対して説明をする義務、いわゆる説明義務も課されます。

2 説明義務の法的構成 
 これら説明義務は、専門家が一般の方に実施するサービスについて、往々にして一般の方が内容を理解しずらい場合が多く、そのときに一般の方が的確な判断をすることができなくなる、そこで、一般の方が的確な判断をすることができるために、専門家は、判断のための説明を行うことが必要とされます。
 特に診療の場合、患者さんは治療行為によって、身体を傷つけられる可能性があるところ、患者さんは、自分の治療行為の内容を自ら決定する権利、すなわち自己決定権があるとされています。この自己決定権を正しく行使する前提として、治療の内容をよく知る必要があり、それに対応して、説明をする義務が医療者に課せられるのです。
 医師には、診療内容や方法、方針を十分患者さんに説明する法的義務が課せられていることになります。
 このように説明義務を果たさない場合、医師に損害賠償という相応のペナルティが課せられることになります。

4 説明義務の程度
 では、どの程度の説明をすれば良いのでしょうか。
 裁判所の判決の中には、医療上の行為を行うについて、それが患者の身体に対する侵襲を伴う場合、治療行為の内容及びその危険性について事前に説明する必要があるとしているものがあり、上記の説明義務を認めている次第です。
 ただ、具体的にはどの程度なのかという点については、個別の診療行為によって様々であり、一概にはいえませんが、少なくとも当該治療行為について、その具体的内容、治療期間、治療を受けることによって生じる問題点などは十分説明する必要があるかと思われます。

5 患者さんへ説明を実施するにあたって
 医師の先生方が患者さんに治療内容などの説明を行う際の注意点を若干述べておきます。後で説明を受けた受けていない、言った言わないの争いを避けるためにも説明の重要な部分、特に治療による副作用や弊害については文書で明確にして手渡して頂き、治療についての同意書を取られることもよいかと思います。また説明しているところを録音していただくことも一つの手でしょう。

6 説明義務を果たさなかった場合
 医師が説明義務を果たせなかったときは、どうなるのでしょうか。
 説明義務が果たされなかった結果、患者さんが死亡したり、症状が悪化した場合には、その招来した結果について、損害賠償義務を負うことになります。
 ただ、説明義務自体は果たしていなかったとしても、当時の治療水準に基づいた適切な治療がなされたのであれば、患者の死亡や症状の悪化との因果関係は認められないとされ、せいぜい、自己決定権を奪ったことに対する精神的苦痛を慰謝するための慰謝料の請求が認められることになります。
 他方、説明されたならば、患者さんが治療行為を受けず、そのために死亡や症状の悪化の結果が生じなかったと立証された場合には、死亡や症状悪化についての損害賠償請求を認められることになります。
 いずれにしても、特にその治療内容がリスクを伴う場合には、十分な説明をしていただく必要があります。
 日々の診療の中で、患者さんに十分説明する時間がない現場の事情もあるかもしれませんが、無用なトラブルを避けるためにも是非とも行っていただきたいところです。

7 最後に
 以上、2回にわたり、患者さんからのクレームについて、一番問題となりやすい、①治療内容の不満について、②治療内容についての説明不足について、できる限り平易に説明を差し上げましたが、法的な判断を含むわかりにくいところであります。よくわからないところについては、自己流でなさらずに、一度、弁護士などの法律専門家にご相談されることをお勧めいたします。


 赤井・岡田法律事務所
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 執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)

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by motomame | 2014-01-30 09:00
今回は、今までの経験を踏まえて、患者さんからクレームが来たときの対処法を書いてみたいと思います。
 患者さんからのクレームといっても、様々なものがあります。治療内容の不満、治療内容についての説明不足、看護師の対応について、または待合室での待ち時間の長さなど様々です。

 ここでは、特に対応をしっかりとしておかなければならない治療内容の不満、治療方針、内容についての説明不足について、どのように対処すればよいかをお話ししたいと思います。

1 治療内容の不満について
 治療内容の不満についても様々なものがあります。十分な治療をしてもらえなかった、治療の結果、症状が好転しない、さらには残念ながら間違った治療をしてしまった場合、等です。

2 よくお話を聴いていただきたい
 まず、医師の先生方にしていただきたいのは、患者さんからの不満については十分話を聴いてあげることです。私たちに相談に来られる患者さんは、医師が話を余り聴いてくれなかったといわれることが少なからずあります。医師の先生方は診療でお忙しいと思いますが、患者さんにきちんと向き合って、よく話を聴いてあげてください。なお、お話を聴かれる際には、後で言った言わないという争いを避けるため、患者さんの承諾を得た上で、録音をしながらお聴きになると良いでしょう。

3 お話しを聴かれた後の対応~即時の対応は禁物
 患者さんのお話を聴いてあげて、内容が診療方法にかかわることではない場合、患者さんに感謝の意を表された上で、改善すべきところは改善するようにされ、今後の経営の役に立ててください。
 内容が診療方法にかかわることである場合、その場ですぐに対応をされるのではなく、後日にどのように対応するか連絡させていただくとして、一旦終えていただきたいと思います。
 その場で、たとえば患者さんの言い分を感情的に否定されたり、また、言い分を全て認めてしまいますと、後で、その行動が問題を生じさせてしまいます。
 感情的に否定された場合、患者さんはさらに感情的になって、医師に対してクレームをつけてくるし、また患者さんのまわりの方にも医師について感情的な発言をしてしまう可能性が出てきます。
 また、全面的に認めてしまった場合、後で、医師に非がないことがわかっても、認めたことを前提に、何らかの金銭的請求をしてくるかも知れません。
 いずれにしても、短絡的な対応は禁物です。
 患者さんが帰った後、医師の先生方は、自身の診療方法が妥当であったか否か検討していただきたいと思います。このときは先生方のご専門である医学的にどうなのかということを考えていただければ結構です。

4 できたら弁護士に相談してみる
 しかし、最終的に、患者さんとの紛争が法的紛争となるか否かは、医師が診療義務を果たしていたか否かという法的判断になります。この点については、法律理論や過去の裁判例などを検討する必要がありますので、我々弁護士に一度ご相談いただく事をおすすめいたします。
 最近は、インターネットでもいろいろと医療紛争の情報などが掲載されております。しかし、これはあくまでも一般的なものであり、また弁護士などの法律専門家が作成していないものもあり、我々弁護士から見て、間違った知識が掲載されている事も少なくありません。
 では、どのような弁護士に相談すればよいでしょうか。
 医師の先生方と違って、弁護士はあまり専門分化していません。たとえば離婚専門の弁護士や、不動産関係を専門的に取り扱う弁護士はほとんどいません。たいていの弁護士は、離婚もやるし、不動産もやるし、損害賠償請求もやるし、さらには倒産事件も刑事事件も取り扱っています。

 医事紛争についてはどうでしょうか。
 医事紛争についても、基本的には損害賠償請求やそれに対する対応であり、一般的に弁護士が取り扱えないわけではありません。
 しかし、医事紛争は、弁護士の事件の中でも専門的な知識が要求される分野です。過去の裁判例についても相当蓄積されており、それらをある程度理解していることが必要ですし、また厚生労働省の通達の理解なども必要な場合があります。したがって、できれば、医療機関特有の法的問題についてある程度慣れている弁護士に相談される方がよいと思います。

 次回は、治療方法や方針などの説明不足について、お話ししたいと思います。


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by motomame | 2014-01-23 09:00
医賠責についてご存知ですか?ー免責金額の定めについて

 日医医賠責保険に加入されている先生方は、お手元にある契約書類を確認してみてください。そこには、免責金額が100万円である旨の説明書きがあると思います。これは、損害賠償額が100万円を超えた場合に、その超えた部分について保険金が支払われることを意味します。たとえば、発生してしまった医療事故について患者さん側と示談が成立し、その額が80万円であったとすると、この保険では補償されず、全額自己負担となるのです。
    そこで、この免責金額部分をカバーするため、医師の先生方は、たとえば京都府医師会が発足させた「京都府医師会100万円保険」など、別の医師賠償責任保険に加入するのが現状のようです。なお、こうした別の医師賠償責任保険に加入すると、日医医賠責保険が適用されない施設の使用・管理上の事故による損害についても補償を受けることができるようになります。

 医賠責についてご存知ですか?-示談交渉サービスがないことについて

 病院賠償責任保険に加入されている先生方は、お手元にある「重要事項説明書」などの契約書類を確認してみてください。そこには、「示談交渉サービスは行いません。」「この保険には、保険会社が被害者の方との示談交渉を行う『示談交渉サービス』はございません。従いまして、この保険が適用されると考えられる事故が発生した場合には、弊社の担当部署からの助言に基づき、お客様(被保険者)ご自身に被害者の方との示談交渉を進めていただくことになりますので、あらかじめご承知置きください。」「保険会社の承認を得ないでお客様側で示談をされた場合には、示談金額の全部または一部を保険金としてお支払いできない場合がございますのでご注意ください。」などの説明書きがありませんか?

    たとえば自動車を運転中歩行者を轢いてしまったというような交通事故を起こしてしまった場合、運転者が任意保険に加入していると、被害者側との交渉などはその保険会社の担当者や保険会社の顧問弁護士などが行ってくれることになっています。交渉がまとまらず裁判などに発展した場合も同様です。「示談交渉サービス」というのはこうしたサービスのことをいいます。
    しかし、上記の説明書きをみると、医療事故が発生してしまった場合、そうした「示談交渉サービス」はありませんと明記されています。すなわち、万が一医療事故が発生してしまった場合、その医師の先生方が病院賠償責任保険に加入していても、患者さん側との交渉を保険会社がその医師の先生方の代わりにしてくれるわけではないのです。その医師の先生方(あるいは病院長などの開設者・管理者)が自分自身で患者さん側と交渉するか、そうでなければ、自分で代理人となってくれる弁護士を探して依頼をし、その弁護士に交渉をしてもらわなければならないのです。
    しかも、保険会社と相談することなく示談などをしてしまうと、たとえ弁護士が間に入って成立した場合であっても、補償が受けられなくなってしまうおそれがあると説明書きには書いてあるのです。

    医療事故に限らず、およそ事故が発生してしまった場合、早期の適切な対応が双方にとって良い結果をもたらすことはあらためて指摘するまでもないことですが、日ごろ患者さんへの対応に追われている医師の先生方にとって、医療事故が発生してしまった場合に、患者さん側との直接対応のみならず保険会社とも同時並行的な対応を余儀なくされるというのは大変な労苦を伴うでしょう。万が一医療事故の当事者になってしまった場合には、早めに弁護士に相談されることをお勧めいたします。


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by motomame | 2014-01-16 09:00
少し遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。

 本年も昨年に引き続き、医師をはじめとする医療従事者や医療機関の方々に対して、有用な情報を発信していきますので、どうかよろしくお願いいたします。
 それでは、早速、本題に入っていきます。

 医師賠償責任保険とは?

 万が一医師の先生方の不注意によって医療事故が発生し、患者さんに損害が発生してしまった場合、その医師の先生方は患者さんやそのご遺族に対して損害賠償責任を負うことになります。医療事故における損害賠償金は高額になることが少なくなく、医師の先生方がそうした万が一の場合に備えてあらかじめ加入するのが医師賠償責任保険(「医賠責」)です。保険制度の目的という点では、交通事故に備えて加入する自動車保険と同じといえるでしょう。

    本稿をご覧になっている病院や診療所を開設した医師の先生方が加入する医賠責には、大別すると二つの種類があり、①日本医師会が契約者(保険料を支払う人)となり、日本医師会のA会員を被保険者(保険の補償を受ける人)とする日本医師会医師賠償責任保険(「日医医賠責保険」)と、②病院等の開設者が契約者となり、開設者や管理者を被保険者とする病院賠償責任保険があります( 病院や診療所に勤務される勤務医の先生方が加入される勤務医賠償責任保険については本稿では触れません。)。
    ①の日医医賠責保険では、施設の使用・管理上の事故(たとえば、廊下に置いてあった医療器具が倒れて患者や見舞客が負傷したとか、看護師が医療機械を移動中見舞客にぶつかり見舞客が負傷した場合など)による損害は補償されませんが、②の病院賠償責任保険では、施設賠償責任保険がセットにされていることが多いようです(詳細は、お手元の契約書類をご確認ください。)。

 補償の内容はご存知ですか?

 補償の内容については、本稿を読まれたのを機に是非一度確認されることをお勧めしますが、概ね、(ア)治療関係費(医療費、入院費、通院費、看護料など)、(イ)休業補償費、慰謝料、逸失利益など、(ウ)裁判費用、弁護士費用等の争訟費用(ただし、後述するように、保険会社が同意したものに限られることが多いようです。)については補償されているようです。


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