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by 弁護士 赤井勝治

人間ドック実施時の注意義務について(4)

 前回の「裁判所の判断」の続きです。

 ところで、人間ドックの受診者は通常検査内容について殆ど知識を有していないうえに、検査内容について取捨、選択できず、通常実施医療機関側の決定した検査内容を一方的に受容せざるをえないのが実情であり、さらに人間ドックは長期にわたる継続的受診による健康管理を予定しており、その間には複数の医療機関における受診も予想されることを考慮すると、実施医療機関によって検査項目、検査方法及び判定基準が大幅に異なるのは好ましいことではない。

 そして、そのような見地から健保連は前記短期人間ドック契約を締結し、指導基準を定めて指導していたのであるから、被保険者である受診者と実施医療機関との間で締結される個別の人間ドック診療契約においても、右短期人間ドック契約及び指導基準に従った検査を行うことが当然の前提とされていたと解するべきである。

 したがって、合理的な理由がないのに右契約において定められた検査項目を実施せず、あるいは指導規準において定められている検査方法・判定基準を採用しないことは、原則として実施医療機関の裁量の範囲を逸脱し許されないと解するのが相当である。

 なお、確かに、人間ドックは病気の自覚症状のない健常者を対象に行われるもので、しかも多くは勤労者を対象としているので、被検者にできるだけ時間的、精神的、経済的負担をかけないで実施する必要性があり、そのため、人間ドックは、全身的な検査を一日又は一泊程度で行うのが通常であること等の理由から、その検査方法、検査内容において、特定の疾病発見のための検査とは異なった限界が生ずることもまたやむを得ないというべきではあるが、判定基準の選択においてはそのような要請は認められず、また、人間ドックは相当程度の費用を支払ってでも受診しようという者が自発的に受診するものであり、いわゆる集団検診のような大量処理の必要性も薄いから、費用面や効率面から生ずる限界を重視すベきではない。

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2017-07-27 09:00