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by 弁護士 赤井勝治

人間ドック実施時の注意義務について(2)

 これに対し、病院側は、次のように反論しました。

 人間ドックは、傷病等に対する治療行為を前提とした検査とは異なり、健常人を対象とした健康診断であるから、疾病の早期発見という課題の他に、受診者に時間的、経済的負担をなるべくかけずに検査を行い、病気でないものを病気でないと正しく判断し、健常人に不必要な経済的、精神的負担をかけてはならないという課題を有する。

 そして、この両課題を実現するためにいかなる検査方法を取り、いかなる判定基準を設定するかという点に関しては、検査を実施する病院の広い裁量に委ねられていると解すべきである。

 当時便潜血検査は生化学的方法によって行われていたが、生化学的方法はヒト以外の血液にも反応してしまうため、厳格な食事制限を行わない限り異常がなくとも陽性反応が出てしまうこと(これを「偽陽性」という。)が多い。
 しかしながら、人間ドックにおいては、前記のとおり受診者にできるだけ負担をかけないという観点から、厳格な食事制限を行うことは不可能である。
 そこで、当時病院では、人間ドックにおける大腸癌検査は精度の高い大腸内視鏡検査によって行うこととし、便潜血検査は下部消化管のうち特に小腸からの出血の有無を調べるために行っており、大腸癌発見を目的とはしていなかった(病院は受診者に対しても大腸内視鏡検査の受診を勧めたが、同人は受診しなかった。)。

 また、当時病院において用いられていた便潜血検査の方法は、生化学的方法のうちグアヤック法と呼ばれるもので、その試薬としてはシオノギBを用いていたところ、この検査方法は偽陽性率が高く、ワンプラスを陽性と判断すると本来異常のない者に対し不必要な負担を強いることとなり、前記人間ドックに課せられている課題に照らし適切とは考えられなかったため、病院では、ワンプラス以下を異常とは判断せず、ツープラス以上を異常と判断する判定基準を設けていた。

 このように、病院がワンプラスを異常と判断しない判定基準を設けていたことは、人間ドックの目的に照らし合理的なものであり、医療機関の裁量の範囲内といえるものである。

 そして、病院は、この判定基準に照らし受診者の検査結果を異常とは判断しなかったのであるから、受診者に精密検査等を指導しなかったことについて病院には何ら過失はない。

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2017-07-13 09:00