医師・医療従事者・医療機関の方々に対する法律事務所からの情報発信です。赤井・岡田法律事務所HP: http://www.akai-okadalaw.com


by 弁護士 赤井勝治

弁護士の立場から見た診断書作成について(7)

 今回も、後遺障害診断書の続きからです。

 既に述べたように、後遺障害診断書は、「症状固定」の時期だけでなく、患者さんの後遺障害の有無及び程度を認定するための資料としても重要な意味を持ちます。

 交通事故の損害賠償において、後遺障害が認められるか否かは非常に重要なファクターです。
 これが認められるか否かによって、請求できる賠償金額が大きく変わります。

 後遺障害の程度については、労災のそれに準じて、等級という形で判断がなされます。

 なお、これは、医師が交通事故の場合に限らず取り扱われる身体障害者の方に対する診断書とは異なります。
 身体障害についても、その程度が等級という形で判断され、その結果いわゆる身障者手帳が交付されるのですが、ここでは、日常生活における動作等をどの程度行えるのかを判断することが目的とされています。

 これに対して、後遺障害については、労災のそれに準じていることからも分かるように、労働能力がどの程度喪失されたのかを判断することが目的とされています。

 この後遺障害診断書については、所定の書式が用意されており、また「後遺障害診断書作成要綱」といった書籍も出版され、各医療機関にも行き渡っているものと思われますので、このような本を参考に、所定の書式の必要項目や必要欄に正確に記載いただければと思います。

 なお、後遺障害の等級については、実務上、損害保険料率算出機構という組織が判断し、基本的にはこの判断が尊重されることとなっています。

 患者さんの側でこれと違った判断を求める場合には、訴訟によることとなり、その場合には最終的には裁判官が判断します。

 したがって、後遺障害診断書に医師が後遺障害の等級についてまで記載する必要はなく、むしろ記載すべきではありません。

 ここでも、「症状固定」の時期と同様、後遺障害診断書の記載は、等級の判断に決定的とも言えるほど大きな影響を与えますが、それでも遺障害診断書は等級判断の資料にすぎません。

 作成する医師としては、このような事情を十分に認識したうえで、当該患者さんが、「症状固定」の時期において、どのような状態にあるのかを、前記のような要領で作成していただければと思います。

 なお、この後遺障害の等級についても、患者さんのみならず、保険会社の担当者の中にも、判断するのは医師であると勘違いされている方が多くいらっしゃいます。
 当然、これも誤解であり、医師からも、自分は、あくまで医学的見地から、後遺障害の程度を判断するための資料として後遺障害診断書を作成するにすぎず、判断するのは自分ではない旨説明いただいても良いと思います。

 医師の立場からすれば、医師の仕事は患者さんの治療であって、これらの書類の作成ではないと主張されたいでしょうし、当該主張については十二分に理解できます。

 また、医師の勤務実態からすれば、このような書類の作成に十分な時間が割けないということも痛いほど承知しております。

 しかしながら、これまで述べてきたように、医師の作成される診断書や後遺障害診断書は、医師当人が考えられておられる以上に、それらに関わる者に対して重大な影響力を有しております。
 弁護士がどれだけ右往左往してみても、その影響力に匹敵するような活動をすることは困難と言わざるを得ません。

 是非、その点だけは十分にご理解いただき、今後ともできる範囲でご協力いただければと思います。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
[PR]
by motomame | 2016-08-04 09:00