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by 弁護士 赤井勝治

医療機関に対する情報照会について(5)

 前回は、たとえ「法令に基づく場合」であったとしても、正当な目的や必要性がなく、また必要な範囲を超えて個人情報を漏洩したような場合には、損害賠償請求の認められる余地があり、この点、「個人情報保護法に関するQ&A」の記載については、これを鵜呑みにするのではなく、きちんと内容を理解する必要がある旨まで述べました。

 まず、「個人情報保護法に関するQ&A」が、裁判所からの調査嘱託については、裁判所からの要請には本人の同意なく応じても問題ないとしているのは、民事上の紛争についての法的判断権限を付与されている裁判所が、調査嘱託を採用して回答を求めるにあたり、正当な目的や必要性、回答を求める範囲について判断をしている以上、不法行為が成立することはないと考えているからではないかと思われます。

 次に、警察・検察庁からの捜査関係事項照会については、プライバシー権の侵害に当たるとして民法により損害賠償請求される危険性は理論上ありえるものの、裁判にまで発展する可能性はそれほど高いとは考えられないとしているのは、警察・検察庁という国家機関が正当な目的や必要性、回答を求める範囲について判断をしている以上、不法行為が成立するとして裁判で争われる可能性はほとんどないと考えているからではないかと思われます。

 これらに対して、弁護士会からの23条照会については、弁護士会の行う正当な目的や必要性、回答を求める範囲についての判断が、裁判所や警察・検察庁といった国家機関と比べて、その信用性が低いと考えているからではないかと思われます。
 その結果として、弁護士会からの23条照会については、プライバシー権等の侵害に当たるとして損害賠償請求される危険があるので、本人の同意書をつけてもらえば回答する旨回答するのが安全であるとされているのでしょう。

 弁護士としては、このような取扱をされることに対しては、忸怩たる思いがありますが、現実にこのような対応が推奨されてしまっている以上、不満ばかりを口にしても始まりませんので、弁護士会がしっかりと正当な目的や必要性、回答を求める範囲についての判断を行い、医療機関の信頼を得ていくほかありません。

 なお、裁判所からの調査嘱託、警察・検察庁からの捜査関係事項照会、弁護士会からの23条照会のいずれについても、これらに応じなかったからといって、罰則があるわけではありません。

 ただ、正当な理由なく応じなかった場合には、回答を拒否したことが違法であると判断される可能性があり、回答を拒否したことで照会者に損害が生じた場合には、損害賠償を請求されるおそれがあります。

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2015-10-29 09:00