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by 弁護士 赤井勝治

手術承諾書について(2)

 今回は、手術承諾書の効力のうち、①の、これから行う手術の結果に対して、一切の異議を述べないことを承諾する内容のものについてです。

 この①については、要するに手術の結果に対する一切の責任を免除する旨の承諾を求めるものです。

 このような手術承諾書を差し入れさせている場合、医師や医療機関は、手術の結果(問題になるのは、障害が残ったり、死亡に至った場合などが多いものと考えられます)についての一切の責任を免れることができるのでしょうか。

 医師や医療機関は、患者さんとの診療契約に基づき、適切な医療を行う義務を負っており、これに違反して患者さんに損害を発生させた場合には、損害賠償責任を負います。
 また、医師や医療機関は、当然に、患者さんに対して故意又は過失により損害を与えてはならず、これに違反した場合には、患者さんに対して、損害賠償責任を負います。

 結論から言えば、上記手術承諾書には、このような医師や医療機関の損害賠償責任を免除する効力(これを患者さんの側から見れば、損害賠償請求権を放棄する効力)は認められません。
 すなわち、上記手術承諾書は、医師や医療機関に適切な医療を行う義務の違反が認められず、また故意又は過失により損害を与えたとは認められないような場合については、異議を述べないという趣旨のものにすぎないものと解されます。

 この点、裁判例でも、病気には医師の最善の努力にも拘らず不測の事態の生ずることのあることを認め、そのような際苦情を言わないという趣旨のものであると解するのが相当である(大阪地裁昭和37年9月14日判決)、単なる「例文」の類と認めるのが相当である(静岡地裁昭和37年12月26日判決)などとされています。

 そして、仮に、医師や医療機関の損害賠償責任を免除する効力までを含ませようとしていたとすれば、公序良俗に違反して無効(上記大阪地裁判決)、あるいは衡平の原則に反する(東京高裁昭和42年7月11日判決、上記静岡地裁判決の控訴審)とされています。

 裁判所がこのような判断をしたこともあって、近時は、①のものは、あまり見かけないようになったと考えられます。

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2015-09-10 09:00