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by 弁護士 赤井勝治

医療法人の出資持分をめぐる課題について(3)

 前回は、出資持分のある医療法人が、出資持分があるが故に抱えている課題として、相続税の課税時に生じうる問題と払戻請求があったときに生じうる問題の2つが考えられるということを述べました。

 すなわち、医療法人に内部留保された剰余金の総額が多額である場合には、これに応じて出資持分が高額な評価を受け、相続税額が巨額になるおそれがあり、また、出資持分の払戻請求があった場合にも、出資持分が高額な評価を受け、医療法人の支払う払戻金が巨額になるおそれがあるということです。

 そして、この2つの問題の発生が考えられる典型的な場面としては、相続の場面が挙げられます。

 具体例として、医療法人の出資持分の半分を有する理事長が亡くなった場合を考えてみましょう。

 理事長には、出資持分以外に3億円の金融資産(預貯金等)と2億円の不動産資産(自宅の土地建物等)があり、相続人は配偶者と子2人とします。
 そして、医療法人の剰余金が10億円以上にのぼり、債務等を控除してもなお純資産額が10億円になったとしましょう。

 この場合、理事長の遺産の総額は、預貯金等の3億円と自宅土地建物等の2億円に理事長が有していた医療法人の出資持分に相当する5億円を合わせて10億円となります。
 そして、理事長が遺言を残していなかった場合には、配偶者が2分の1、2人の子がそれぞれ4分の1の法定相続分を有することになります。

 まず、相続税については、基礎控除額が、3000万円+600万円×3=4800万円ですので、これを控除した9億5200万円に課税されることになります(実際には小規模宅地等の特例などの適用が考えられますが、ここでは単純化するためにこれら特例の適用は考えないものとします)。

 全ての遺産を相続人3人が法定相続分に応じて相続したと仮定した場合、配偶者の相続税は、法定相続分の2分の1の配偶者控除が使えます。その結果、本来なら、9億5200万円の2分の1にあたる4億7600万円が課税対象となり、この場合の相続税率は50%で、控除額が4200万円なので、相続税額は、1億9600万円となりますが、これがかかりません。
 
 これに対し、子らは、それぞれ2億3800万円が課税対象となり、この場合の相続税率は45%で、控除額が2700万円なので、相続税額は、それぞれ8010万円となります。

 このようにして、配偶者は相続税がかからないものの、子ら2人の相続税の総額は、1億6020万円とかなり高額となって、その納税はたいへんです。

 このような事態を招いた最大の原因が、医療法人の出資持分が5億円という高額な評価となった点にあるのは明らかです。

 医療法人の出資持分を甘く見ていると、上記のような高額な納税を招くおそれがあります。

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2015-05-21 09:00