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by 弁護士 赤井勝治

訴訟における証人尋問・本人尋問について(3)

 前回は、主に訴訟における証人尋問・本人尋問の手続面について説明しました。
 今回が、このテーマの最終回です。

 尋問は、あくまで裁判官が争点となっている事柄について判決を言い渡すために必要な「真実」を探究する目的で行われるものであって、当事者や関係者が言いたいことを自由に発言できる手続ではありません。

 では、一切自分の言いたいことが言えないのかというと、そこまで厳密に手続が進められることはありません。
 ただし、質問に対する発言が答えになっていないような場合には、「きちんと質問に答えてください。」、「聞かれてないことについて勝手に発言しないください。」と裁判官から注意されることがあります。
 こうした裁判官からの注意を無視するような発言を続けると、そのような供述態度自体が発言の信用性を低くする要素(「その質問にきちんと答えてしまうと、自分に不利益になるから、はぐらかしているのだろう。」など)であると判断されてしまうおそれがあります。

 このように裁判官は発言の内容のみならず、発言者の態度などもチェックしています。
 相手方の弁護士に対して反抗的な態度を取り続けるなどするのは厳に慎まなければなりません。

 弁護士としては、依頼者である原告あるいは被告に対する主尋問においては、極力「はい」か「いいえ」の答えで済ませられるよう考えます。
 依頼者の主張はすでに準備書面等で明らかになっており、通常は証拠調手続に入る前に、依頼者の主張をまとめた「陳述書」も裁判所に提出されているので、具体的な内容を逐一詳細に本人に発言してもらう必要がないからです。
 また、自由に発言した内容が、当の本人の認識とは異なり、裁判官からすれば本人にとって不利益な発言を自らしたと認定されてしまう危険をできる限り小さくするという目的もあります。
 どうしてもこれだけは裁判官に直接聞いてもらいたい事柄があるという場合には、打合せの段階で、依頼者から自分の代理人弁護士にその旨の申し入れがあり、直接裁判官に聞いてもらいたい事柄が答えとなるように質問をしてもらうということもあります。

 しかし、どれほど本人が切望されても、それを発言することが本人にとってマイナスになってしまうような場合(発言自体がマイナスになってしまうこともあれば、発言自体はともかくそれが「やぶ蛇」になってしまうことが少なくありません)には、弁護士から発言を控えるように促されることもあります。
 代理人の弁護士は、打合せの段階で、依頼者である原告(あるいは被告)にきちんと説明をし、理解をしていただいたうえで証言台に立ってもらうことに心を砕きます。

 これに対し、反対尋問の場合には、相手方がどのような回答をするのかは実際にやってみないと分かりません。
 その意味で、反対尋問は弁護士の力量が試される場面であると言えます。
 通常は質問相手が対立当事者である以上、自分の依頼者にとって不利益な発言しかしないであろうということを前提に、どこまでのことを発言させるのかなど色々とシミュレーションをするなどします。
 「はい」とか「いいえ」だけを答えさせる質問をして、いくつかの事項について確認を取り、各事項についての主張相互間の矛盾・牴触を追及することを考えたり、具体的な発言をさせる質問をして、その発言内容についてそれまでなされた主張や提出されている証拠関係との矛盾・牴触を追及するなど、何通りものQ&Aをあらかじめ想定して準備しておきます。

 反対尋問においては、何の成果も得られないことの方が多いのですが、想定したとおりの発言が得られ、相手方の主張を崩せることもあります。
 ときには、想定の範囲を超え、期待した以上の成果が得られる場合もあります。

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2014-10-16 09:00