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by 弁護士 赤井勝治

証拠保全手続について(2)

 前回に引き続き、証拠保全についてのお話しです。

 証拠保全手続は、証拠保全申立書を作成して裁判所に申立をするところからはじまります。
 そして、裁判所が証拠保全の決定を出した後、実際に裁判官と患者側代理人弁護士が医療機関に出向き、裁判所は、当該医療事故に関して、どのような診療記録があるのか、その有無・内容を確認し、証拠保全調書を作ります。
 その際、確認された診療記録は謄写(コピー)され調書に添付されます。
 患者側代理人弁護士は、後日、裁判所に対して、その証拠保全調書の謄写請求をして、必要な診療記録を入手することになります。

 一般に、証拠保全手続は、ある日突然、裁判所の執行官が当該医療機関を訪れ、「証拠保全決定書」を医療機関に送達し、当該決定書に記載されている検証時刻(送達から1~2時間経過した後とされることが多いようです)に、裁判官、裁判所書記官、患者側代理人弁護士がやってきて、裁判官から当該患者に関する診療記録一切の開示を求められるというものです。

 それでは、こうした証拠保全決定書が送達されてきた場合、医療機関としてはどのように対応すればよいでしょうか。

 証拠保全手続は、医療機関側に対して診療記録の開示に「協力」することが求められるのであって、医療機関側がこれを拒否しても過料が課されるなどするわけではありません。
 しかし、証拠保全手続で開示を拒否した診療記録が、後日、訴訟等で医療機関側の証拠として提出された場合には、改ざんされたのではないかとあらぬ疑いをかけられるなど、不利な取扱いを受けるおそれがあります。
 証拠保全手続の際に開示がなされていれば、後日、改ざんの有無について争われることがなくなりますので、その意味では、誠実に対応・協力することが肝要であるといえるでしょう。

 このように、証拠保全決定書に記載のある診療記録はすべて開示することが前提といえますが、決定書に記載のない診療記録(換言すれば、開示への協力が求められていない診療記録)まで開示する必要はありません。
 実際には、保全手続の最中に、そうした診療記録がたまたま発見された場合、患者側代理人弁護士から検証(提示・謄写して調書に添付)を求められることがありますが、医療機関側としてはこれを拒否することができます。
 ただし、拒否すれば、後日、再度証拠保全の申立てが行われるであろうと医療機関側が判断し、これに応じる場合もあります。

 なお、医療機関によっては、決定書に記載のあるなしにかかわらず、患者側代理人弁護士からの積極的な要求があるか否かにかかわらず、当該医療事故に関連すると思われる診療記録すべてを開示するという方針をとっているところもあります。

 前述のとおり、証拠保全手続は、ある日突然数時間前に実施されると告知される手続ですので、医療機関にとっては裁判官や患者側代理人弁護士の要請に応えるだけでも精一杯という状況に陥りがちです。
 しかし、証拠保全手続が後日の訴訟提起を見据えて行われ、保全手続の時点での医療機関側の対応が訴訟手続に影響を与えかねないものであることからすると、開示すべき診療記録の範囲はどこまでなのかという判断をしなければならない場合、あるいは、現場で判断を求められた場合などのために、医療機関側も証拠保全手続に代理人弁護士を立ち会わせることがベストの対応といえるでしょう。

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2014-07-03 09:00