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by 弁護士 赤井勝治

転医、転送又は転院に関する医師の義務(3)

 裁判例検討
  前回ご紹介した裁判例から、転医・転送義務の有無について検討すると、以下の要素を総合的に考慮して、転医・転送義務の有無が判断されていると考えられます。
① 患者の症状からみて、どのような疾患が考えられるか。
② その医師(医療機関)に期待される医療水準からみて、上記疾患の診断が可能か。
③ その医師(医療機関)が、その疾病を検査・治療する技術や施設を有しているか。
④ その検査法・治療法は当該患者に適応があるか。
⑤ 期待されている検査・治療が他の医療機関の医療水準となっているかどうか。
⑥ 現実に転送することが可能か(搬送できる状態か、転送先はあるかなど)。

 損害
 転医・転送義務による損害の範囲は、当該義務違反と結果との間に因果関係が認められるか否かによって判断されます。
 当然、結果との間に因果関係が認められなければ結果についての損害賠償は認められませんが、裁判例の中には、結果に対する因果関係が認められない場合にも、適切な診療を受ける機会が奪われたことによる慰謝料を認めたものもがあります。
 たとえば、神戸地裁姫路支部平成8年9月30日判決(判例時報1630号97頁)は、自転車運転中に転倒して頭部打撲等の負傷を負い、開頭手術を受けた患者が、脳ヘルニアにより死亡した事案で、当初患者を受け容れた病院が患者を転送する場合において、1箇所の収容見込みのない専門医療機関に連絡を取るのみで、他の専門医療機関には手続きをとらず、転医義務違反があったとされました。そして、医師の転医義務違反と死亡との因果関係は認められないとしたうえで、適切な転医措置により死期を遅らせ、適切な治療により症状を改善する機会と可能性を奪われたことに対する慰謝料として、患者本人に400万円、その妻及び子4人にそれぞれ100万円を認めました。

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2014-06-05 09:00