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by 弁護士 赤井勝治

転医、転送又は転院に関する医師の義務(2)

 裁判例
  転医・転送義務については、次のような裁判例があります。
 ① 大阪高裁平成9年9月19日判決(判例時報1630号66頁)
患者が、吐き気や発熱を訴え、一般開業医を受診し、インフルエンザ様感冒(いわゆる「かぜ」)と診断され、経過観察となったが、症状が続くので、他の医療機関を受診したところヘルペス脳炎と判明した事案で、当該一般開業医は、「ヘルペス脳炎などその他の重大な脳の疾病も疑い、…ヘルペス脳炎などの治療に適した高次の医療機関に転送」する義務を怠ったと判示しました。
 ② 大阪高裁平成9年9月19日判決(判例時報1635号69頁)
平成3年当時、一般開業医が乳癌の患者に対し、一部の医師の間で実施されていた乳房温存療法について説明し、その治療法を実施している医療機関に転送する義務があったかどうかが問われた事案で、裁判所は、平成3年当時、乳房保存療法はまだ安全性の確立された術式とはいえないので、「(医師が患者に)乳房保存療法を受けさせるべく、他の医療機関に転送する義務があったということはできない」として過失を否定しました。
 ③ 東京高裁平成10年9月30日判決(判例タイムズ1004号214頁)
肝機能障害で約2年間診察をしていたにもかかわらず、医師が肝硬変などを見落とした事案で、裁判所は、「診察していた医師は、重篤な疾病ともいうべき肝硬変を疑った段階か、もしくはC型肝炎と判明した段階で、病態を正確に把握し、肝硬変への移行の有無を調べるため、専門医のいる病院での精密検査を指示すべきであった」として過失を認めました。
 ④ 大阪地裁平成10年10月21日判決(判例時報1702号125頁)
一般開業医が、患者に対し無菌性髄膜炎と診断したが、のちにウィルス性髄膜炎と判明した事案で、裁判所は、「ウィルス性髄膜炎を罹患している疑いの有無につき鑑別診断を行い、ウィルス性髄膜炎に罹患している可能性があると認められたときは速やかに抗ウィルス剤の投与による治療を開始すべき義務を負うということができ、鑑別診断及び治療に適した高次の医療機関へ転送し、鑑別診断のための脳波検査等の検査及び治療が受けられるよう適切な措置を講ずべき注意義務があった」と判示しました。
 ⑤ 最高裁平成15年11月11日判決(判例時報1845号63頁)
開業医から総合病院への転送が半日ほど遅れた急性脳炎の事案で、「急性脳症などを含む重大で緊急性のある病気に対しても適切に対処しうる、高度な医療機器による精密検査及び入院加療などが可能な医療機関へ患者を転送し、適切な治療を受けさせる義務があった」と判示しました。

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2014-05-29 09:00