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by 弁護士 赤井勝治

医師の説明義務(2)

 前回に引き続き、医師の説明義務そのものについて説明したいと思います。

 説明義務の範囲
 これについては、前述の患者の自己決定権を実質的に保証するに足りる内容のものとされています。
 判例(最高裁平成13年11月27日判決)では、「患者の疾患の治療のために手術を実施するに当たっては、診療契約に基づき、特段の事情のない限り、患者に対し、当該疾患の診断(病名と病状)、実施予定の手術の内容、手術に付随する危険性、他に選択可能な治療方法があれば、その内容と利害得失、予後などが説明義務の対象となる」としています。

 説明の時期
 これは、当該侵襲的治療行為の前です。

 説明義務違反の効果
 説明義務違反があっても、当時の臨床実践における医療水準に従った診療、治療行為がなされた場合、仮に、患者に後遺症や死亡などの結果が発生しても、原則として医師がこれらの結果についてまで責任を問われることはありません。この場合には、患者が自己決定権を行使する機会を奪われたという精神的損害に対する慰謝料が認められるのみです。
 ただし、例外的に、説明義務が尽くされていたならば、後遺症や死亡という結果が発生しなかったという因果関係が証明されれば、医師は全損害に対する責任を負うことになります。
 説明義務違反についての有名な事件としては、「エホバの証人」患者への輸血事件(最高裁平成12年2月29日判決)があります。
 この事件では、肝臓腫瘍の摘出手術を行うにあたり、医師が、輸血拒否の固い信念を有しているエホバの証人の信者である患者に対し、他に救命手段がない場合には輸血するという治療方針について説明すべき義務に違反したとして、慰謝料50万円が認められました。
 裁判で認められている慰謝料の金額としては、20万円~500万円程度のものが多く一般的には、さほど高額にならないことが多いと考えられます。

 特別なケース
 特別なケースとしては、まず、医療水準上の治療方法が確立されていないケースがあげられます。
 これについては、極小未熟児の未熟児網膜症などについて、いくつかの裁判例があり、裁判例の流れとしては、当初は医師の説明義務は否定されていました。しかし、近時は、必ずしも当時の臨床医学の実践における医療水準として確立されていない治療方法であるからといって、直ちに説明義務がないとは言えないとして原則としては説明義務を否定しながらも、例外的に説明義務が肯定される余地を認めるものが出てきています。
 次に、特別なケースとしては、一定の効果や結果の達成を目的としてなされる医療行為(美容整形など)のケースがあげられます。
 美容整形、歯科の審美的治療、近視改善術などは、一定の効果や結果の達成を目的として行われるものであり、これらについては、通常、緊急性と必要性に乏しく、説明すべき時間的余裕が十分にあります。
 よって、医師は、当該美容整形等を選択する必要性の有無、手術内容、方法、代替的診療方法の有無、後遺症発生の有無、内容、程度、当該医療行為をしなかった場合の予後などについて患者に十分説明をすべきとされます。そして、医師が説明を十分尽くしていたならば、患者は当該医療行為を受けなかった蓋然性が高いと考えられることから、医師に説明義務違反があった場合には、原則として、医師は当該医療行為によって生じた結果の全てについて責任を負うものとされます。

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2014-04-10 09:00