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by 弁護士 赤井勝治

医師の説明義務(1)

 従来から、医療訴訟が提起される発端の一つに、医師の説明不足があることが指摘されてきました。
 そこで今回は、医師の説明義務そのものについて説明したいと思います。

 説明義務の根拠
 主として二つの根拠が挙げられます。
 その一つは、治療行為(侵襲的治療行為)に対する患者の同意、承諾を得るために必要だという点です。
 手術、麻酔薬の投与、検査のための造影剤投与等の患者の身体への侵襲を伴う治療行為については、患者の同意、承諾が必要であるため、患者から有効な同意、承諾を得る前提として、医師には手術等の内容や危険性についての説明が義務づけられます。
 この点についての、リーディングケースとなった判例に、最高裁昭和56年6月19日判決があります。
 これは、頭蓋骨陥没骨折の傷害を受け、それによる脳内出血の疑いがある患者に対し、医師は早期に開頭のうえ脳内血腫の除去手術の必要があると考え、同手術の内容及びそれに伴う危険等を説明して手術をしましたが、患者が死亡したという事案で、裁判所は、「頭蓋骨陥没骨折の傷害を受けた患者の開頭手術を行う医師には、右手術の内容及びこれに伴う危険性を患者又はその法定代理人に対して説明する義務がある」としました。

 根拠としてのもう一つは、患者が、自己の生命、身体、機能をどのように維持するかについて自ら決定する権能(自己決定権)を行使するために医師に課されるという点です。
 その根底には、いわゆる「インフォームド・コンセント」の考えがあります。ここに言う「インフォームド・コンセント」の内容は、患者が自己の病状、医療行為の目的、方法、危険性、代替的治療法などにつき正しい説明を受け、理解した上で、自主的に選択・同意・拒否できることをいい、①医療従事者からの十分な説明と、②提供された情報に基づく患者側の理解・納得・同意・選択という2つの内容を含むものとされています。
 この点についての裁判例(東京地裁平成12年12月25日判決)では、「一般に、医療上の治療行為を行うについて、それが患者の身体に対する侵襲行為に該当する場合には、原則として、医師又は歯科医師は、患者に対し右治療行為の内容及びこれに伴う危険等について事前に説明した上、患者の同意を得るべき義務を負っているというべきである。そして、これは患者の立場からみると、患者は原則として、自己の受けるべき治療について一定の決定権を有しているというべきである。」とされています。

 このように医療機関は、診療契約に付随する義務として、特段の事情がない限り、所属する医師等を通じて、医療行為をするに当たり、その内容及び効果をあらかじめ患者に説明し、医療行為が終わった際にも、その結果について適時に適切な説明する義務を負うものとされます。

 説明の相手方 
 説明の相手方は、原則として患者本人ですが、それが困難な場合には法定代理人などの本人に替わるべき者ということになります。

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2014-04-03 09:00