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by 弁護士 赤井勝治

医療スタッフの過誤について(1)

 今回は、医療機関に勤務する医師、看護師、臨床検査技師、さらには受付事務員などのスタッフのミスについて、開設者たる医師(以下「開設者」と言います)はどのような責任を負うのか考えてみたいと思います。
 まずは、総論をお話をして、次回は看護師の補助行為の限界と看護師のミス、いわゆる看護過誤についてお話をしたいと思います。

 まず医療機関の開設者は、患者さんとの間で明示又は黙示の診療契約という契約を締結して、診療をされることになります。そして、開設者自身の過失によって、患者さんに損害(障害や死亡の結果など)が発生した場合、当然開設者の債務不履行責任が生じ、損害賠償に応じなければならないことになります。

 では、開設者以外の勤務医が、過失によって患者さんに損害を与えた場合はどうでしょうか。
 民法では、原則として、契約当事者自身の過失によって生じた損害について、契約当事者自身が負担をするということになっています。そうであれば、開設者は直接問題を起こした訳ではないので、責任を負わないとしていいのでしょうか。
 そうではありません。民法では、契約の当事者だけではなく、その契約当事者を補助する者の過失についても契約当事者自身の過失として同じように取り扱うべきだという考え方があります(いわゆる履行補助者の故意・過失の理論)。
 この考え方に基づいて、契約当事者自身が責任を問われることになります。

 これを医療機関に当てはめて考えてみると、開設者に直接の過失はなくても、勤務医に過失があれば、開設者自身も契約当事者として損害賠償責任が生じることになります。
 したがって、開設者としては、勤務医の診療行為に問題がないかチェックをしておく必要があります。
 そのためには常に勤務医とコミュニケーションを円滑にとれるように関係を整備し、勤務医のミスが早期に発見できるようにしておきたいものです。

 では、看護師のミスによって患者さんに損害を与えた場合はどうでしょうか。
 看護師は、医師の診療行為の補助行為及び看護行為を行うことができます。看護師は、その位置づけからして、勤務医に比べて履行補助者であることがはっきりしており、開設者は看護師の過失について責任を負うことになります。
 また、看護師が診療補助行為や看護行為以外のいわゆる医行為を行った場合は、看護師が医師法違反になるとともに、そのような行為を黙認していた開設者も医師法違反に問われることになります。

 受付などの事務スタッフがミスをした場合はどうでしょうか。
 たとえば、患者さんの情報を不意に外部へ漏らしてしまったり、薬を間違って渡してしまった場合等です。
 受付スタッフは医療及びその補助自体を行う立場ではありませんが、開設者は患者さんの情報を適切に管理すべき義務が診療契約上認められると解されますし、また当該医療機関が投薬まで行っている場合は、投薬の行為(適切適量な薬を渡すこと)についても適切に行うべき義務があると考えられます。
 したがって、事務スタッフの仕事も診療契約上の履行補助者としての仕事と位置づけられることになり、勤務医や看護師と同様に事務スタッフの過失についても開設者は責任を負うことになります。

 このように、開設者は自らの診療行為に気を配るだけではなく、勤務医や看護師などの医療スタッフ、受付などの事務スタッフ等、医療機関に勤務する全てのスタッフの行為について常に気を配り、ミスが発生しないように、またミスが発生してもリカバリーできるような体制を作ることが肝要です。
 次回は、看護師の過誤と看護師の診療補助行為の限界についてお話をしたいと思います。

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2014-03-20 09:00