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by 弁護士 赤井勝治

医療紛争解決の新しい動き(2)

 前回述べた医療裁判の欠点のうち、①と②の欠点を克服しようとすれば、できる限り手続きを簡略化することが必要となりますが、これを実現しようとすると、ADRを主宰する弁護士などの手続実施者が、短期間で事案の解明をしなければなりません。このような、手続きの中で行われることは裁判と変わりませんが、短期間かつ低コストで行われるADRは、「法準拠型(裁判準拠型)モデル」などと呼ばれています。前述の(ア)事実評価機能と(ウ)金銭救済機能を重視したADRといえるでしょう。
 愛知県弁護士会紛争解決センターが、医療ADRについて長い実績を誇っているほか(平成10年スタート)、東京三弁護士会が平成19年9月から合同でスタートさせた医療ADRは、従来の仲裁委員のほか、患者側代理人の経験ある仲裁委員と、医療機関側代理人の経験ある仲裁委員が協力し合いながら紛争解決を目指すというものであり、この法準拠型モデルのADRであるといわれています。事案によってさまざまですが、おおむね2~3回の協議を経て和解に至っているケースもあります。また、本年4月から業務を開始した千葉県の医療紛争相談センターは弁護士会ではない第三者機関(NPO法人「医事紛争研究会」)による法準拠型モデルのADRであるといわれています。訴訟をすれば判決まで通常2~3年を要するとされる医療紛争について、3~4カ月での解決を目指しているそうです。

 これに対して、③~⑤の欠点を克服しようとした場合、ADRを主宰する弁護士などの手続実施者が事案を解明し評価をすることをしてしまうというのでは、結局、裁判官ではない人間が行っているというだけで、なんら欠点の克服にはつながらなりません。
 そこで、近時、とくに医療者側から注目されているのは、前述の(イ)対話促進機能を重視した「対話型モデル」などと呼ばれるADRです。
 これは「メディエーション」と呼ばれる専門的な技法を修めた手続実施者が主宰するものであり、患者側と医療者側が向き合って対話する場を提供し、当事者の感情的なぶつかり合いを吸収し、双方のニーズに応える解決を合意によって得るというものです。
 NPO法人「医療紛争処理機構」のADRはこの対話型であるといわれています。
 京都弁護士会においても、紛争解決センターの中に、医療事故の紛争解決に特化したADRを検討中で、近く「メディエーション」技法の研修会が予定されています。弁護士も、従来の民事裁判における「攻撃・防御」の技法のみならず、こうしたあたらしい技法の修得し、日々の業務に活用することが求められるようになってきているということでしょう。

 これまでは、「示談が成立しなければ裁判」というくらいの選択肢しかなかった医療紛争の解決手段に、ADRという新たな選択肢が増えるということは、患者側にとっても医療者側にとっても良いことであると思われます。
 医療ADRについては、金銭賠償が合意された場合に、賠償保険が使えるかという重要な問題が残されていますが、管轄に拘束されない(どこのADRでも利用できる)という利点を活かし、具体的な紛争の性質に応じて、ADRを使い分けるという時代が到来するかもしれません。

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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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by motomame | 2014-03-13 09:00