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問診にまつわる問題について(2)

 それでは医師が問診の義務に違反したかどうかは、どのような基準で判断されることになるのでしょうか。

 まずは、その問診が「医療水準」に照らして十分なものであったか否かが問題とされます。
 この「医療水準」そのものについては、また改めて取り上げさせていただきますが、ここでは、診療当時の臨床医学の実践において求められる医療のレベルであり、医療機関の性格・属性、所在地域の医療環境の特性等の事情を考慮して判断されるものという程度にご理解ください。

 当該問診が、この「医療水準」に照らして不十分であったと判断された場合には、問診の義務に違反したことになります。

 これを前提に、もう少し、具体的に見てみることにします。

 一般的には、問診の義務違反は、初診時の問診において問題となることが多いものと考えられます。

 これは、初診時には、検査結果などの他の情報が乏しいため、問診によって得られる情報の重要性が高いためです。

 たとえば、治療の初期において、問診によってしか得られない情報を、十分な問診をしなかったために得られず、その結果として、薬の副作用などの重大な結果が発生した場合には、問診の義務違反があったと判断される可能性が高くなります。

 また、治療中においては、既に得られている診察や検査の結果を踏まえて、十分な問診を行ったかが問題とされます。

 既に得られている診察や検査の結果を前提に、「医療水準」からすれば、疑われる病気の有無を確認するための問診をすべきであるのに、これを怠ってその病気を見逃してしまったような場合には、問診の義務違反があったと判断される可能性が高くなります。

 さらに、この問診の義務違反を判断する際には、患者さんに対する発問の内容や発問の方法が適切であった否かも問題となります。

 問診は、医学的な知識を有しない一般人に対して行われるものであるため、問診により医師が何を聞き出そうとしているのかを患者さんが理解できるように発問しなければ、いくら問診をしても、必要な情報を聞き出すことはできないからです。

 よって、形式的に問診をしていても、その発問の内容が、必要な情報を聞き出すために適切なものと言えない場合には、問診の義務違反となる可能性があります。

 また、発問の方法についても、患者さんに対して、誘導的な発問の方法をした場合などには、適切な問診をしたとは言えないとして、問診の義務違反となる可能性があります。

 医療訴訟では、問診の義務違反が問題となることも少なくありませんので、問診の重要性を再認識していただき、十分に留意していただければと思います。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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# by motomame | 2016-08-25 09:00

問診にまつわる問題について(1)

 問診は、診療行為の入口段階で行われ、どれだけ検査技術等が発達・進歩したとしても、診療行為の第一歩として不可欠のものであると考えられます。

 問診は、言うまでもなく、患者さんの病状等を把握して、それ以降の検査の実施や治療行為の要否などを決定したり、既に治療中の場合であれば、実施している治療行為の効果を確認したり、治療行為の修正・変更などを判断するために行われます。

 一般的に、問診によって得られる患者さんの情報は、診察や検査などの結果と比べれば、その客観性や正確性が低いと思われますが、他方で、問診によらなければ得られない病歴や家族歴などの情報があることも確かです。

 そして、このような問診によってしか得られない情報が、今後の検査や治療行為の判断に有用な場合もあるものと考えられます。
 では、医師は、診療契約において、どのような問診を行う義務を負っているとされるのでしょうか。

 医療訴訟において、問診の義務が問題とされる場合、二つの類型が考えられます。

 まず、特に初診時に問題とされるのが、病気の診断のための問診をする義務です。
 
 これは、患者さんの自覚症状や発症時期、病歴などの問診が不十分であったために、正しい診断がなされず、それ以降に必要な検査や適切な治療が行われなかった場合に問題となります。
 ケースによっては、初診時のみならず、経過観察時に問題となる場合もあります。

 次に、検査・治療の際に問題とされるのが、合併症や副作用を回避するための問診をする義務です。

 これは、薬に対する副作用やショックの経歴等の問診が不十分であったがために、その患者さんに対する処方が禁忌であった薬を使用してしまって、副作用やショックが生じた場合に問題となります。

  赤井・岡田法律事務所
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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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# by motomame | 2016-08-18 09:00

弁護士の立場から見た診断書作成について(7)

 今回も、後遺障害診断書の続きからです。

 既に述べたように、後遺障害診断書は、「症状固定」の時期だけでなく、患者さんの後遺障害の有無及び程度を認定するための資料としても重要な意味を持ちます。

 交通事故の損害賠償において、後遺障害が認められるか否かは非常に重要なファクターです。
 これが認められるか否かによって、請求できる賠償金額が大きく変わります。

 後遺障害の程度については、労災のそれに準じて、等級という形で判断がなされます。

 なお、これは、医師が交通事故の場合に限らず取り扱われる身体障害者の方に対する診断書とは異なります。
 身体障害についても、その程度が等級という形で判断され、その結果いわゆる身障者手帳が交付されるのですが、ここでは、日常生活における動作等をどの程度行えるのかを判断することが目的とされています。

 これに対して、後遺障害については、労災のそれに準じていることからも分かるように、労働能力がどの程度喪失されたのかを判断することが目的とされています。

 この後遺障害診断書については、所定の書式が用意されており、また「後遺障害診断書作成要綱」といった書籍も出版され、各医療機関にも行き渡っているものと思われますので、このような本を参考に、所定の書式の必要項目や必要欄に正確に記載いただければと思います。

 なお、後遺障害の等級については、実務上、損害保険料率算出機構という組織が判断し、基本的にはこの判断が尊重されることとなっています。

 患者さんの側でこれと違った判断を求める場合には、訴訟によることとなり、その場合には最終的には裁判官が判断します。

 したがって、後遺障害診断書に医師が後遺障害の等級についてまで記載する必要はなく、むしろ記載すべきではありません。

 ここでも、「症状固定」の時期と同様、後遺障害診断書の記載は、等級の判断に決定的とも言えるほど大きな影響を与えますが、それでも遺障害診断書は等級判断の資料にすぎません。

 作成する医師としては、このような事情を十分に認識したうえで、当該患者さんが、「症状固定」の時期において、どのような状態にあるのかを、前記のような要領で作成していただければと思います。

 なお、この後遺障害の等級についても、患者さんのみならず、保険会社の担当者の中にも、判断するのは医師であると勘違いされている方が多くいらっしゃいます。
 当然、これも誤解であり、医師からも、自分は、あくまで医学的見地から、後遺障害の程度を判断するための資料として後遺障害診断書を作成するにすぎず、判断するのは自分ではない旨説明いただいても良いと思います。

 医師の立場からすれば、医師の仕事は患者さんの治療であって、これらの書類の作成ではないと主張されたいでしょうし、当該主張については十二分に理解できます。

 また、医師の勤務実態からすれば、このような書類の作成に十分な時間が割けないということも痛いほど承知しております。

 しかしながら、これまで述べてきたように、医師の作成される診断書や後遺障害診断書は、医師当人が考えられておられる以上に、それらに関わる者に対して重大な影響力を有しております。
 弁護士がどれだけ右往左往してみても、その影響力に匹敵するような活動をすることは困難と言わざるを得ません。

 是非、その点だけは十分にご理解いただき、今後ともできる範囲でご協力いただければと思います。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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# by motomame | 2016-08-04 09:00

弁護士の立場から見た診断書作成について(6)

 前回に引き続き、後遺障害診断書についてです。

 交通事故における損害賠償の考え方としては、まず怪我が治癒した時期ないしは、この「症状固定」の時期(何年何月何日)を特定します。

 そして、原則として、賠償の対象となる治療費や休業損害補償、慰謝料は、この怪我が治癒した時期ないしは、「症状固定」の時期までに発生したものに限られます。

 この「症状固定」の時期以降の損害賠償については、後遺障害が認められる場合にのみ、その後遺障害の程度に応じて、本来その後遺障害がなければ労働によって得られたはずの利益(これを「逸失利益」といいます)及び後遺障害による慰謝料が賠償の対象となります。

 したがって、この「症状固定」の時期をいつにするのかは、損害賠償請求において、重要なファクターとなります。

 そして、前記のように、その判断は、最終的には裁判官ないしは保険会社が行うことになるのですが、その判断に決定的とも言えるほど大きな影響を与えるのが、医師によって作成される後遺障害診断書に記載される「症状固定」の時期の記載です。

 これを記載する医師としては、このような事情を十分に認識したうえで、当該患者さんが、前記の「症状固定」の定義にあてはまる状態になったのがいつなのかを慎重に判断して記載いただきたいと思います。

 現実には、患者さんが後遺障害診断書の作成を依頼されて、診察を受けられた日に、医師として、患者さんが前記のような状態にあると認められれば、その日を「症状固定」の時期と判断して記載されることが多いものと考えられます。
 ただ、診療録などの記載等からこれより前の時期が相当であると判断される場合には、その時期を記載いただきたいと思います。

 また、仮に、医師として、患者さんが未だ前記の「症状固定」の定義にあてはまる状態にはなっていないと判断される場合には、その旨を患者さんに説明していただき、現時点で後遺障害診断書を作成すべきか否かを再度検討していただくよう患者さんにお伝えください。

 患者さんのみならず、保険会社の担当者の中にも、「症状固定」の時期を決定するのは医師であると勘違いされている方が多くいらっしゃいますが、それは誤解です。
 医師からも、自分は、あくまで医学的見地から、「症状固定」の時期を決定するための資料として後遺障害診断書を作成するにすぎず、決定するのは自分ではない旨説明いただいても良いと思います。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
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執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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# by motomame | 2016-07-28 09:00

弁護士の立場から見た診断書作成について(5)

 さらに、民事上の損害賠償請求のために使用する診断書としては、事故直後に作成される診断書のほかに、後遺障害診断書というものがあります。

 これは、その字のとおり、患者さんの交通事故による後遺障害についての診断内容を記載するものですが、その使用目的は、少々特殊といえます。

 すなわち、ここでいう「後遺障害」は、医学上いわれる「後遺症」とは異なり、自動車損害賠償保障法及び自動車損害賠償保障法施行令に準拠した交通事故に特有のものです。
 最も近いものが、労災における後遺障害ですが、これに準じてはいるものの、微妙に異なる部分もあります。

 その使用目的は、交通事故によって生じた後遺障害に基づく損害の賠償請求のためということになりますが、これを理解していただくためには、「症状固定」という概念を避けて通れません。

 ここでいう「症状固定」というのは、保険業界の造語であると言われており、損害賠償・保険論的な概念です。
 その「症状固定」の時期についての最終判断権者は訴訟になった場合には裁判官であり、示談により保険会社から保険給付を受ける場合には保険会社になります(請求者からの提示を保険会社が受け容れなければ、示談による解決は図れず、訴訟になるという意味でいえばそのようになります)。

 そして、この「症状固定」とは、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態であり、投薬・理学療法により症状の一時的な回復が見られるに過ぎない場合をいいます(平成12年に労働基準監督署から出された「労災保険における傷病が治ったとは」という定義と同一内容になります)。

 ここに「医学上一般に認められた医療」とは、労災保険の療養の範囲(基本的には健康保険に準拠)として認められたものを指します。

 また、「投薬」には、外用薬(軟膏、クリーム、ゲル、湿布、膏薬など)、注射(皮下、筋肉内、間接内、腱鞘内、静脈内注射、各種神経ブロック)も含まれ、「理学療法」には、西洋医学以外のいわゆる補完代替療法(CAM)と呼ばれるマッサージ、鍼灸、整体・矯正も含まれるものと考えて差し支えないと思われます。

  赤井・岡田法律事務所
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# by motomame | 2016-07-21 09:00