医師・医療従事者・医療機関の方々に対する法律事務所からの情報発信です。赤井・岡田法律事務所HP: http://www.akai-okadalaw.com


by 弁護士 赤井勝治
 医療訴訟における鑑定人については、過去に取り上げたことがありました。

 「鑑定」は、専門性の高い分野について、特別の学識経験を有する第三者から意見を求めるものです。

 医師が裁判所から鑑定人になって欲しいとの依頼を受けた場合に、①時間と労力をとられ、精神的負担が大きすぎる、②法廷で人格攻撃などの質問をされ、不快な思いをするおそれがある、③何をどのように鑑定すればいいのかが分かりにくいなどといった問題点があり、近時は、これらを多少なりとも改善する努力がなされているということを述べさせてもらいました。

 ただ、現在でも、上記のような問題点が解消されているとは言い難いことは厳然たる事実です。

 現に、鑑定人の経験のある医師からは、カルテを含む膨大な訴訟記録を検討して、しかも鑑定書という書面を作成しなければならず、これにかかる時間と労力が甚大であること。そのうえ、後日、証人として法廷で尋問を受けることは、時間、労力、精神面において、かなり大きな負担であるとの指摘を受けたことがありました。

 また、鑑定事項が的外れであったり、何を求められているのかが分かり難いという指摘を受けたこともありました。

 今回は、この鑑定人とは異なる専門委員について取り上げてみたいと思います。

  赤井・岡田法律事務所
京都市中京区新椹木町通竹屋町上る西革堂町184番地
                  オクムラビル2階
        TEL(075)257-6033
        FAX(075)212-3670
執筆責任者 弁護士 赤井勝治(京都弁護士会所属)
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# by motomame | 2017-03-23 16:00
 前回までに、2つの裁判例をご紹介しました。

 医師と患者さんとの間の診療契約の法的な性質については、病気を診察治療することを内容とする「準委任契約」であるとされています。

 この「準委任契約」とは、当事者の一方が法律行為でない事務を委託し、相手方がこれを承諾することで成立する契約のことを言います。

 そして、診療契約は、契約当事者間(ここでは医師と患者さんとの間)の信頼関係に基づく契約であると考えられます。

 したがって、この当事者間の信頼関係が決定的に破壊されるような事情が発生した場合には、もはや当事者は契約関係に拘束されることがなくなると考えることは可能でしょう。

 そういった見地から上記の裁判例を見てみると、医師や病院と患者さんとの間の信頼関係が破壊されている場合には、診療拒否に正当な事由があると認められるようにも読めなくもありません。

 しかし、これらは、それぞれの事案においては妥当な判断ではあっても、一般化することまでできるかというと疑問です。

 というのも、いずれの裁判例も、詳細に事案を見ると、それぞれが特殊な事案と言えなくもないからです。

 よって、安易に一般化してしまうのは危険です。
 
 むしろ、ケースによっては、信頼関係の破壊によって診療拒否に正当な事由があると認められる場合があると考えるのが相当でしょう。

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# by motomame | 2017-03-16 09:00
 近時、インターネットの情報などの中には、医師と患者さんとの間の診療契約上の信頼関係が破壊されている場合には、診療を拒否しても、応招義務違反にはならないかのような記載が散見されます。

 このような記載は、以下の下級審の裁判例等を根拠にしているものと思われます。

 その二つ目は、東京地方裁判所平成26年5月12日判決です。

 この判決では、「診療に従事する医師は、正当な事由があれば診察治療の求めを拒むことができるとされているところ、原告と被告との間の信頼関係は適切な医療行為を期待できないほどに破壊されていることからすれば、原告には被告からの診察の求めを拒否する正当な事由があるというべきである。」旨判示しています。

 この事案は、少々複雑なのですが、簡略化すると、過去に手術を受けた患者さんが、その約3年半後に、病院に対して、当時の診療録やレントゲン等の画像や手術録画等の開示や手術の説明を求め、これに対する病院側の対応を巡って紛争となりました。そして、病院側から、患者さんに対し、損害賠償などの債務の不存在確認や業務妨害等の禁止を求めて訴訟が提起され、その中で、裁判所は、現時点で、病院側は患者さんに対して、診療義務、問診義務はないと判断しました。

 裁判所は、患者さんが、病院長の説明に不審を抱くとともに、その対応にも不満を持ち、謝罪を求めるなどしたという言動からすれば、病院が患者さんに対して医療行為を行う上で基礎となる信頼関係は、もはや適切な医療行為を期待できないほどに破壊されていると言わざるを得ないとし、現時点において、病院側には患者さんに対して、診療義務、問診義務はないと判断しました。

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# by motomame | 2017-03-09 09:00
 近時、インターネットの情報などの中には、医師と患者さんとの間の診療契約上の信頼関係が破壊されている場合には、診療を拒否しても、応招義務違反にはならないかのような記載が散見されます。

 このような記載は、以下の下級審の裁判例等を根拠にしているものと思われます。

 まず一つ目は、弘前簡易裁判所平成23年12月16日判決です。

 この判決では、「診療契約において、患者は身体や生命という重要な法益を医師に託し、医師とともに継続的に治療を行うのであるから、診療の実施にあたっては医師及び患者間に信頼関係が必要とされる。そして、上記信頼関係が失われたときは、患者の診療・治療に緊急性がなく、代替する医療機関等が存在する場合に限り、医師または医療機関がこれを拒絶しても、診療拒絶に正当事由があると解するのが相当である。」と判示しています。

 この事案は、患者さんが大学附属病院で不妊治療を受けていたところ、患者さんから病院に対し、かかる治療に関して訴訟が提起され、そのため病院側から患者さんに「転医及び診療延期のお願いについて」という書面が交付され、これが診療拒絶にあたるかが争われたというものです。
 
 裁判所は、上記書面の交付は、実質的に診療拒絶したものと解したうえで、患者さんからの訴訟提起により患者さんと大学附属病院との信頼関係は失われたと認定し、さらに、患者さんの診療・治療に緊急性がなく、大学附属病院の代替機関も存在したことから、診療拒絶には正当な理由が存在したと判断しました。

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# by motomame | 2017-03-02 09:00
 医師の応招義務については、過去にも取り上げたことがありました。

 医師法19条1項は、「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」と定めており、これを医師の応招(応召)義務と呼んでいます。
 
 そして、患者さんから診察、診療を求められたにもかかわらず、正当な事由もなくこれを拒んだ場合、医師の先生方には次のようなペナルティが課される可能性があります。
 
 まずは、応招義務違反を反復した場合には、医師の品位を損する行為として医師免許の取消等の行政処分の事由となる場合があります(旧厚生省の行政解釈)。
 
 また、医師の先生方が診療拒否したことにより、患者さんに損害が発生した場合には、先生方に過失があるとの一応の推定が働き、拒否することについて正当な事由があったことを証明しない限り、その損害を賠償する責任を負うことになります。

 では、どのような場合に、「正当な事由」があったとされるのでしょうか。

 この点、前回に取り上げた際には、旧厚生省の行政解釈による基準によれば、医師の先生方には、かなり厳しい義務が課せられており、「正当な事由」が認められる場合は限定的であって、しかも、残念ながらこの点に関する裁判例などの前例がほとんどないため、どのような場合であれば「正当な事由」が認められるのかを一般的に論ずることは容易ではない旨を述べました。

 しかしながら、インターネットの情報などの中には、医師と患者さんとの間の診療契約上の信頼関係が破壊されている場合には、診療を拒否しても、応招義務違反にはならないかのような記載が散見されます。

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# by motomame | 2017-02-23 09:00